つくして。あつかひければ。そのしるしにやほどなく。ほんぶくし侍りける。そのとき
まま子の惣領三人のおととをよびいひけるは。まま母の慈悲恩愛の御こころざし。いまさら
おもひあたり。ありがたき事かぎりなし。われらかつたなきこころにて。としごろふ
孝をなしたてまつりしつみ。のがるべきみちなしとて。四人あひぐし政所へゆきまま
ははの恩徳われわれがふ孝のとがをいひたて。つみにあはんとうつたへ申あげければ
世にめづらしきとつたへ。ままははの徳行たくひまれなる事なりとて。ままははをよび
いだしたまひ。ほうひとして其家の諸役を免許したまひ。さて四人のまま子も。とがを
しりてうつたへきたりければ。いまよりのちはさだめて。悪行をあらたむべし。しからば
これをもつみすべきにあらずとて。ゆるし返したまへば。まま子もおのづから善人となり
孝行のこころざしふかくなり侍りけるとなん
十三河南の樂羊子。道をとをりける時。こかねを一つかみひろいうれしくおもひもちて
帰りて。妻に見せよろこびければ。妻すこしもこれをよろこばずして申けるは。ここ
ろざしあるさふらひは。いかほどのどかはきても。盗泉の水をのまず。廉潔なる人はいかほど
うゑたる時も。されくらへといひて。あたゆる食をくらはずといふ事あり。たとひいゑまづし
くして。あさゆふにせまり侍るとも。みちにかなはざるたからをもとむべからず。しかるに