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佐保会館の設置
佐保会館は奈良女子高等師範学校・奈良女子大学の同窓会である佐保会が所有する同窓会館です。建築は皇太子殿下(昭和天皇)の御成婚記念事業として大正13(1924)年に企画され、奈良県吉野出身の建築家岩崎平太郎氏(1893〜1984)に設計を依頼しました。昭和3(1928)年9月の竣工以来今日まで、佐保会運営の本拠地としての機能を果たしてきていす。建築費26,683円20銭は当時の佐保会員と母校教職員の醵金によるものです。

国の登録有形文化財に認定
築後77年を経過した平成17(2005)年、『この建物は和室と洋室を備え、内部は巧みな平面計画と落ち着いた意匠でまとめられており、外観を和風とする昭和初期の木造近代建築として重要である。』と評価され、国の登録有形文化財に認定されました。
改修工事の概要
佐保会館が国の登録有形文化財に認定されたのを機に、建物の耐震補強と、社団法人佐保会としての任務である公益事業を、ここを拠点にして更に充実・発展させることを目的として、大改修工事が行われました。改修の設計監理は一級建築士石井智子氏(佐保会員)に依頼し、平成18(2006)年3月着工、翌19年3月完工しました。歴史的建造物のよさを残すため、伝統工法や自然素材を用いる配慮が随所になされています。改修資金131,541,764円は、佐保会員をはじめとして、母校教職員、あせび会員(佐保女学院・奈良佐保短期大学同窓生)、そして柳汀会員(附属学校同窓生)などからの醵金によるものです。
建物の見どころ
佐保会館は、明治41(1908)年の旧奈良県立図書館、明治42(1909)年の奈良ホテルなどと類似した伝統的な意匠の建築で、階段手すりの擬宝珠(ぎぼし)、広間の格天井(ごうてんじょう)、窓枠のデザインなどに特徴があります。
外観
建物は桁(けた)行24.75m、梁間12.07m、木造2階建て、入母屋造(いりもやづくり)です。東西の妻(つま)側には豕扠首(いのこさす)という形式の妻飾りがあります。壁は柱が外面に現れる和風建築の伝統的構法である真壁(しんかべ)造りであり、漆喰塗壁です。
豕扠首
玄関
車寄せの天井は格天井で、アールヌーボー調のシーリングライトがつけられています。玄関引き戸や表札は創建当時のままのものです。また玄関入り口上部の繊細な欄間(らんま)も特徴のひとつです。
一階
中廊下の上部の壁は一部創建当時のものを残しています。12畳半・10畳敷の二間続きの第二和室は格式ある書院造りとなっています。天井は棹縁(さおぶち)天井で、押さえの棹に猿頬(さるぼお)と呼ばれる面取りをしているのが特徴です。また障子の組子は縦横を交互に交差して組む両組手(りょうくで)と呼ばれるもので、匠の技の丁寧さがみられます。欄間は竹の節という形式で、竹の節の形状の切込みを入れた親柱を立て、横材を二本渡して間に、たすきをいれたデザインです。さらに1階には重厚な雰囲気の応接室があり、窓はロープを用いた当時のままの上げ下げ窓です。玄関ホールの置時計は設立以来、故障もなく15分毎にウエストミンスター寺院と同じ荘厳な音を館内に響かせています。
二階
玄関ホールの左手階段を登りはじめると、1階のやや重い雰囲気とはうって変わり、吹き抜け空間に作られた窓から入る光によって明るく開放的な趣となります。吹き抜け廊下の手すりには神社や寺院にみられる伝統的な建築物の装飾である擬宝珠が付けられており、モダンな中にもクラシックな雰囲気を漂わせています。木製ドアを開けると、200uの大ホールが目の前に広がります。大ホールの天井は折上(おりあげ)格天井です。折上げは周囲の壁と天井の間を支輪(しりん)という曲げ木でカーブをとりながら立ち上げ、天井を高くする形で格調の高いものです。改修前には、南北に並ぶ窓は上げ下げ窓でしたが、復元が難しくすべて押し開き窓とし、上部の窓はハンドルで操作するようにしました。床は二重床にして、保温が考慮されています。照明は壁に取り付けたもの、天井から吊るしたものとも当時のものです。改修では、明るさ確保のためダウンライトが増設され、非常用ライトも取り付けられました。大ホールに隣接した西側の洋室は、当初の優美であるが清楚な雰囲気をそのまま残して、照明器具(当時のまま)、カーテン、壁紙の模様など全体が調和のとれた心地よい空間になるよう配慮されています。


