元興寺極楽坊を南下した、奈良町のほぼ中央、毘沙門町に位置する町家(正木家)を「奈良女子大学 奈良町セミナーハウス」として2005年10月から利用できることとなりました。現代GPでは、このセミナーハウスをアネックスと位置づけ、授業等に利用しています。
 ・正木家について
・セミナーハウスの開設にむけて
・セミナーハウス利用
・セミナーハウスの位置
正木家について
敷地には主屋、土蔵があり、主屋は切妻造、桟瓦葺、つし二階建である。平面は一階南側に通土間があり、土間に沿って一列4室あり、二列目は喰違いで3室ある。二列目の奥が床・棚を備えた座敷、次間は改造されているが定石通りであれば仏間にあたる部屋である。二階に2室と、表側のつし二階にあたる物置スペースがある。
構造は奈良町などでも広範囲に見られる一般的な構造で内法を差物で固め、小屋組は和小屋組である。この小屋組が土間に立つと仰ぎ見ることができる。近年は土間に天井を張って、構造を見ることができない家が多い中で、構造が観察できるので貴重である。つし二階部分は登梁を使用して空間を広くしている。一階から二階へ昇る箱階段や、土間には竃、井戸が残り、伝統的な生活の様相を残している。
この建物は、かつては乾物屋を営んだり、二階に残るカメラケース、フィルム、正木さんの話から、カメラ店を営んだ時期があることが分かる。さらに、それ以前の一時期、診療所に利用したことがあり、この時の改装がある。表の2室は床を下げていて洋風の内装になっており、おそらく、受付・事務所と待合室であると考えられる。座敷の手前にあるフローリングの部屋は診察室、通り土間の一番奥にレントゲン室がある。
建築年代は確かな資料はないが、構造の様子、座敷の構えから、明治時代中頃と考える。外観はつし二階で虫籠窓を設け、軒高が低いので、建築年代に比べると古風で江戸時代後期の様相である。(上野邦一)

立面図 平面図
セミナーハウスの開設にむけて
◆開設まで
2003〜2004年度の地域貢献特別支援事業で、奈良町の町並み保全・活用支援事業に取り組んでおり、奈良町空家調査を通じて、正木家をセミナーハウスとして利用できることが確定しました。
2005年度に入ってから、覚書調印の準備を進め、正木家と大学双方の条件や利用状況について意見交換を行いました。合意を得て、6月27日に本学学長と正木さんとの間で覚書を交わしました。当面、10年間、奈良女子大学「奈良町セミナーハウス」として利用することが決まりました。
◆学生参加でセミナーハウスを改装
その後、利用者の便を考えてトイレ・浴室を改装しました。この改装作業は、できるだけ学生の手で行い、教育の場としようと住環境学専攻の学生が参加しました。トイレ・浴室の改装作業に平行して床下補強・畳入れ替えを行いました。これらの作業の結果、ゼミや30人ほどの講義が可能となりました。また、12月には、学生と附属中学校の生徒ら計30名ほどで年末大掃除を行いました。
セミナーハウスの利用
2005年10月31日に開設式を行い、11月29日には見学会を実施しました。その後、週1、2回の頻度でゼミなどに利用しています。
開設までの経緯 |
2005年6月27日 |
覚書調印 |
7〜9月 |
トイレ・浴室改装、床下補強・畳入れ替え |
10月31日 |
開所式 |
11月29日 |
見学会開催 |
12月20日 |
大掃除 |
セミナーハウスの位置

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