「八種唐菓子」に代表される、平安貴族たちに愛された揚げ菓子。
それはいったいどんな食べ物だったのでしょうか?
最古の料理書の一つである『厨事類記』は、基本的な唐菓子の作り方をこのように記しています。
モチヰケナキ米シロメテ。コニツキフルイテ。シトギノヤウニシトネテオシヒロメテ。ユヲサラサラトワカシテ。湯ニウクホドユデテ。又ウスニイレテ。メデタクツキアワセテ。トリイダシテ。ヌノヲヌラシテ。ソレニツツミテ。ヌノノカタハシヲアゲテ。サマサズシテ。スコシヅツトリテ。何ニモツクル也。…ツクリテノチハ。ヨキアブラヲコクセンジテ入ベシ。
これをまとめると、基本的な唐菓子の作り方は以下のようになります。
- 粘り気の少ない米(うるち米)を精米して、粉にしてふるう。
- 水を加えて少し練る。(しとぎに近い状態)
- 湯を沸かし、生地を湯に浮くまでゆで、臼にいれてつく。
- 臼から取り出す際は濡らした布につつみ、布の端をあげてまとめ、冷めないうちに少しづつ造形する。
- 良質の油で揚げる
今回は、砂糖などの味をつけない、シンプルな唐菓子を再現してみました。
『厨事類記』の記述や、古代菓子のなごりであるといわれる奈良・春日大社のブトの作り方も参考にしつつ、家庭でもできそうな作り方を提案しています。ぜひ試してみてください。
精米・製粉から始めるのは大変なので、市販の米粉を使います。
米粉にお湯を入れ、練ります。
耳たぶくらいの硬さになり、べとつかずにうまくまとまるのがよい状態です。
春日大社の神饌にならい、5分くらい蒸し器(又はせいろ)で蒸します。くっつかないように、布巾を敷いた上に生地を入れるのがポイント。
ゆでてもよいかもしれません。
餅つき用の臼と杵を用いるのがベストなのでしょうが、用意ができませんでした。
なので生地をすし桶に入れ、「すりこぎ」で叩いてみることにしました。
古い時代に書かれた唐菓子の記録には、唐菓子の図がほとんど残っていません。
そのため、江戸時代にまとめられた唐菓子の図を参考にして成形しました。
古代の食用油は主に胡麻油だったようなのですが、値段が張るので胡麻油と菜種油を混ぜて使いました。
あまり高温で一気に熱を加えると、破裂してしまうことも判明!
少し焼き色が薄かったり、破裂してしまったものもある気もしますが、完成しました。
いよいよ試食。
食感は…思ったよりも軽い感じがします。現代のおかきのような食べ物とは少し違うようです。
そのままでも米粉の甘みがしないではないですが、黄粉や砂糖を付けた方がやっぱりおいしいです。
このページtopへ 文化史総合演習ホームページへ*注意点*
- 生地を練る際、水分を入れすぎないこと。
柔らかくしすぎると、搗く、成形するなど、その後の作業すべてが難しくなります。- 生地を成形するときに、少々べとついても手に水をつけないこと。
生地に余分な水分がつくと、確実に油はねの危険が増します。
もし生地がべとくつばあいは、粉をまぶす、手に油をつけるなどの対策を考えてください。- 揚げる際は低温でじっくりと。
高温で揚げると破裂の危険が高まります。また胡麻油を用いると、香りも色もよく仕上がります。