タイトル:子ども学プロジェクト


地位貢献:次世代自立支援の子ども学

■平成21年度 実施企画詳細


企画1公開連続講演会 (全4回)

      
子どもたちの生活と表現活動  
      ――いま子どもたちの生きるかたち 
 
         チラシ
    


 企画趣旨
  
 
人はみな、それぞれの生活の場で、自分を表現し、他者の表現を受けとめ、さらにはたがいの共同の表現を
生み出しながら生きています。子どもたちもまた同じです。

 個性はさまざまですが、誰もがそれぞれの個性に応じて、自らを表現し、それぞれの生きるかたちを作り出して
います。そこでいう表現は、いわゆる音楽や絵画や文学という狭義の表現活動に限りません。学びや遊びもまた
表現です。生活のかたちそのものが、子どもの一つの表現だともいえます。

 今回の連続講演会では、このような観点から子どもたちの表現活動を再考します。
子どもたちはいま、学校の場で、あるいは生活の場で、自らを表現しえているのでしょうか。

 対 象
   一般
   教員、児童福祉関係者、子育て支援関係者、青少年育成関係者、大学院生 ほか

 参加費
   無料 (参加お申し込みはこちら

 内 容

 

 第1回講演会 「子どもと表現――子どものウソは『嘘』か?


    講 師: 内田 伸子
            (お茶の水女子大学大学院 人間文化創成科学研究科 教授)

    日 時: 2009年10月24日(土)午後1時30分〜4時
   
    会 場: 奈良女子大学 記念館2階 講堂

    講演趣旨:

    子どものウソは本当に「嘘」なのだろうか?
    子どもは他人をだますことができるので あろうか?
    ウソはいつから「嘘」になるのか。

    語ること、伝えること、思い出すこと を取り上げ、ウソが生成される過程を明らかにする。
    幼児期の終わりに相手の立場に 立ってふるまうことができるようになると、
    相手を思いやってつくウソも見られるよ うになる。

    大人は子どものウソを、「嘘」と決めつけてしまわず、子どもの心の中に 起こっていること
    への洞察を思いやりをもち、子どもの育ちを見守っていただきたい。



     
開催レポート

    講演会ではまず、子どもの想像力について認知発達的な観点からお話しいただいた。
    「体験の想起は再構成であり、想像≠経験である」こと、「想像とは創造の可能性をもった
    人間の特質である」ことが提示された。
    
    次に、副題である「子どもの『ウソ』は『嘘』か?」という問題について、子どもの日常的な
    葛藤場面や作文、刑事事件の証言、童話や口承文芸など、多岐にわたる事例やエピソ
    ードを盛り込みつつ、「思い出すこと」「語ること」「伝えること」の3つの観点からお話しいた
    だいた。そして、「知は個人内にあるものではなく、会話を通して社会的に構成されるもの
    である(会話するうちに話の筋が通るように協働で加工される)。子どものウソは『嘘』では
    なく、大人が子どものウソを『嘘』にするのである」という結論が鮮やかに語られた。

    最後に、「子どもとの会話で大人が心がけたいこと」をお話しいただき、子どもが自身で
    考える余地を残すことばがけの重要性をお話しいただいた。

    
    終了後のアンケートでは、「こんなに子どもに関する研究が為されていることを嬉しく思った」
    「音読・可視化の重要性を再認識した」「育児の参考になった」「今までの自分の子育て観に
    確信を持つことができた」「とてもわかりやすく楽しかった。あっという間に時間が過ぎた」
    「『子どもたちのために何かできることがあれば・・・』という言葉が印象的で心強かった」
    などの声が寄せられた。

          
 



                          

 第2回講演会 「学校の中での表現を通して生まれる子どもたち

    講 師: 奥村 高明
             (国立教育政策研究所 教育課程センター 教育課程調査官・
              文部科学省 初等中等教育局 教育課程課教科調査官


    日 時: 2009年11月14日(土)午後1時30分〜4時
   
    会 場: 総合研究棟 (文学系北棟) N101教室

    講演趣旨:

    子どもが彫刻刀で線を一本彫る。
    このたった一つの造形行為ですら世界から独立したものではない。

    周りには、友達や先生などの人、材料や用具、教室などの具体物、学習という出来事、
    あるいは学校の制度、文化など一見無形なものなど様々な資源がある。
    それらの資源とその子の経験の重層的な関係が表現活動として現れる。
    同時にそこで、その子らしさというアイデンティティが成立する。

    このことをビデオデータなどの事例から検証していく。




     
開催レポート
    教育の中で子どもの表現はどのように育っていくのか。
    奥村氏はまず、私たちが日常的にいう「子ども」は「現代の日本の子ども」を想定
    していることを確認し、「子ども」とは文化的・歴史的なものである点を指摘された。

    そして、コミュニティや歴史、社会的文脈といった環境と子どもとの関係性は、学習
    が成り立つ上で切っても切り離せない点を踏まえ、学習場面を子どもの「学習の生態
    系」として捉えて、子どもはその中で自分らしさを発揮しているとみる視点からお話し
    くださった。
    
    また、自らを「学校の一教員」であるとおっしゃる奥村氏は、全国の現場をかけまわっ
    て見てこられた様々な事例をビデオでご紹介くださり、子どもの「視点」をてがかりに
    することで現れる子どもの表現の豊かさを目の当たりにした会場は、新しい発見へ
    の驚きに包まれた。

    参加者からは、「今まで考えもしなかったような新たな視点の存在に気づかされた」
    「子どもには子どもの理由があることを改めて知ることができた」などの声が寄せられた。

    
                                      
 



 

 第3回講演会 「思いを受けとめるからだ・関係をつなぐ動き
                    ――ダンスセラピーの視点から


    講 師: 川岸 惠子
             (大阪府立急性期・総合医療センター 非常勤

          ア山 ゆかり
             (武庫川女子大学短期大学部

    日 時: 2009年12月19日(土)午後1時30分〜4時
   
    会 場: 総合研究棟 (文学系北棟) N101教室

    講演趣旨:

    子どもたちのからだから表れでる思いを、
    私たち周囲の大人はどのように受けとめ表し返せばよいのか。

   ダンスセラピーは動きを通じて自己の表現能力を獲得しながら、自己認識を促進し、
    心身の統合や自己の回復・成長をめざす芸術療法の一つである。
    アメリカに始まったこの療法は近年、日本においても医療、福祉、教育などの
    臨床場面での実践が試みられている。

   セラピストと対象者双方が身体レベルで関わりあう体験の中でことばやイメージが
    どのように導き出され、拡げられ深まってゆくのかについて、精神科デイケアや
    知的障害児サークルでのセラピーを担当するお二人から報告していただく。



     
開催レポート
    
    カウンセリングは言語的に治療を行うが、ダンスセラピーにおいてはムーブメントを
    治療媒体とする。個人の情緒面、社会性、認知面、身体そのものを統合するための
    プロセスの中に、動き、すなわちムーブメントを用いるのである。

    知的障がいをもつ子どもたちのサークルでセラピーを実践しておられるア山氏は、
    対象となる年齢層及び活動の場の多様さや、セッションを重ねる中で人間関係の
    基盤となり得る信頼関係を築いていくクライエントの様子をご紹介くださった。

    精神科デイケアで実践をしておられる川岸氏は、事例を踏まえつつ、「利用者の
    方々は、身体のもつユーモアや現実を利用しながら、プロセスを楽しんでいると思う。
    各々が『私は私』を感じて成長していく場が、精神科デイケア・リハビリテーションに
    おけるダンスムーブメントセラピーではないか」と語られた。

    参加者からは、「心と身体がつながっていること、リズムにのって共に動くことで関係
    が築けるということにとても共感した」「自分の身体と向き合うことを考える、という言葉
    が心に残った」などの声が寄せられた。

     
                         ア山先生                      川岸先生
 



 

 第4回講演会&ワークショップ 「即興を通した『表現』の可能性

    講 師: 八木原 容子
             (カール・オルフ研究所

    日 時: 2010年1月23日(土)午後1時30分〜4時
   
    会 場: 奈良女子大学 記念館2階 講堂

    講演趣旨:

    カール・オルフ研究所(ザルツブルク)での経験から、私が考える「表現する」とは、
    自分が考え、よいと思ったことを現実化することである。

    研究所で、この「自分」を見つけるためにさまざまな活動を経験してきたが、
    中でも即興活動は、私にとってまさに初めての経験と呼べるものであり、
    現在の私の「表現」のあり方にかなりのインパクトを与えた。

    そこで、ワークショップを通して、即興活動の一つの方法を体験してもらうとともに、
    講義ではワークショップについての討論・質問、また研究所での即興活動のケースを
    紹介したい。



     
開催レポート
    ドイツを拠点として、健常及び障がいをもつ子どもたちにワークショップを行うとともに
    パフォーマーとしてもご活躍の八木原氏にお話しいただいた。

    講演会はワークショップ形式で進められ、参加者は「表現する」ことや「目に見えない
    ものをからだで感じる」ことを体感しながら八木原氏のことばに耳を傾けた。

    「1番気持ちいいと感じるからだのかたちを見つけてください」という声かけで、全員が
    裸足になって自身のからだと向き合うことから始まり、「目に見えないもの」を表現して
    他者と伝え合ったり、ペアで互いの影や鏡像になったり、といった活動が展開したワーク
    ショップは、折々に自由な発言が飛び交う和やかな雰囲気で進んだ。

    参加者からは、「自分でも思ってもみなかったような表現を自身の体や動きで表現でき、
    驚いた」「動きと音楽の表現の可能性を色々な角度から探ることができた」といった声が
    寄せられた。


      
 

後援 奈良県、奈良市、大和郡山市
奈良県教育委員会、奈良市教育委員会、大和郡山市教育委員会、奈良女子大学附属学校部

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