第1回講演会 「子どもと表現――子どものウソは『嘘』か?」
講 師: 内田 伸子
(お茶の水女子大学大学院 人間文化創成科学研究科 教授)
日 時: 2009年10月24日(土)午後1時30分〜4時
会 場: 奈良女子大学 記念館2階 講堂
講演趣旨:
子どものウソは本当に「嘘」なのだろうか?
子どもは他人をだますことができるので あろうか?
ウソはいつから「嘘」になるのか。
語ること、伝えること、思い出すこと を取り上げ、ウソが生成される過程を明らかにする。
幼児期の終わりに相手の立場に 立ってふるまうことができるようになると、
相手を思いやってつくウソも見られるよ うになる。
大人は子どものウソを、「嘘」と決めつけてしまわず、子どもの心の中に 起こっていること
への洞察を思いやりをもち、子どもの育ちを見守っていただきたい。
開催レポート
講演会ではまず、子どもの想像力について認知発達的な観点からお話しいただいた。
「体験の想起は再構成であり、想像≠経験である」こと、「想像とは創造の可能性をもった
人間の特質である」ことが提示された。
次に、副題である「子どもの『ウソ』は『嘘』か?」という問題について、子どもの日常的な
葛藤場面や作文、刑事事件の証言、童話や口承文芸など、多岐にわたる事例やエピソ
ードを盛り込みつつ、「思い出すこと」「語ること」「伝えること」の3つの観点からお話しいた
だいた。そして、「知は個人内にあるものではなく、会話を通して社会的に構成されるもの
である(会話するうちに話の筋が通るように協働で加工される)。子どものウソは『嘘』では
なく、大人が子どものウソを『嘘』にするのである」という結論が鮮やかに語られた。
最後に、「子どもとの会話で大人が心がけたいこと」をお話しいただき、子どもが自身で
考える余地を残すことばがけの重要性をお話しいただいた。
終了後のアンケートでは、「こんなに子どもに関する研究が為されていることを嬉しく思った」
「音読・可視化の重要性を再認識した」「育児の参考になった」「今までの自分の子育て観に
確信を持つことができた」「とてもわかりやすく楽しかった。あっという間に時間が過ぎた」
「『子どもたちのために何かできることがあれば・・・』という言葉が印象的で心強かった」
などの声が寄せられた。