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  • 新出 尚之
  • にいで なおゆき
  • 准教授 博士(情報科学)
  • 【専門分野】数理論理学(論理プログラミング)、計算機科学
  • 【連絡先】e-mail:nide[@]ics.nara-wu.ac.jp 居室:G409

研究分野

数理論理学、論理プログラミング

研究内容

記号論理学の中の一分野、論理プログラミングを研究分野としています。現在は、論理プログラミングによる合理的エージェントの 実現をテーマとして研究を行っています。

記号論理学は、我々が行う推論の過程を記号化して捉えるものです。例えば、推論の際に用いる基本的な推論規則として、 “p”と“pならばq”から“q”を導く「三段論法」があります。これは、“pならばq”を「p→q」と表すことにすると、 2つの記号列「p」と「p→q」から「q」を導く操作と捉えることができます。

記号化することの利点の1つは、記号列に対する操作は計算機に行わせやすいという点です。実際、このようにして、 計算機に自動推論を行わせることができます。

また、“xのy乗はzである”を「exp(x,y,z)」と表し、2つの記号列
exp(x,0,1) …(A)
exp(x,y,z)→exp(x,y+1,x×z) …(B)
を計算機に与えておくと、計算機は(A)のxに3を代入したexp(3,0,1)と(B)から、上記の三段論法でexp(3,1,3)を導き、 さらにそれと(B)から同様にexp(3,2,9)を導き…というように、3の累乗を次々計算できます。このように、 計算の過程を推論で実現できるというのが「論理プログラミング」の基本的な考え方です。

現在の私は、論理プログラミングの考え方を用いて、周囲の状況を認識しながら、その時々に応じて自らの目標を設定して動作する、 人間の代理エージェントのソフトウェア的実現に向けた研究を行っています。このためには、エージェント(あるいは人間)の 心的状態(目標・信念など)、あるいはその時間的変化を記号で表現できるように、論理学を拡張しておくと好都合です。

例えば“あることがら(pとする)の達成を目標とする”を「Goal(p)」と表し、“pが次の時刻(例えば1分後)に成り立つ”を 「Nexttime(p)」と表すことにすると、“次の時刻にpを達成することが目標ならば、今qを実行する”は 「Goal(Nexttime(p))→q」と表せます。

このように拡張すると、推論規則として三段論法だけでは不十分です。どのような推論規則を加えれば、心的状態や時間を 含む推論が的確に行えるのかを、現在考えています。

また、機械的な推論だけでは、人間の代理をやらせるにはどうしても不十分な面が出てくるので、学習などの機構を使って 補うことも、これから始めていこうと考えています。

その他

オープンソース・ソフトウェアとは、ソースコード(プログラミング言語で記述された、人間にとって可読なプログラム)を公開し、 誰でも開発(拡張や不具合修正など)に参加できるようにしたソフトウェアのことで、広く使われているものがいろいろあります。 私もそれらのソフトのいくつかに対する修正差分(パッチ)を公開したり、自作のソフトのソースを公開して、 そうした活動に微力ながら協力しています。自作のものは、情報科学科のFTPサイトで公開中(下記参照)。 パッチを出したものには、GNU awk, SWI-Prolog, plain2, kemacs, mnewsなど、UNIXで(ものによってはWindowsでも) 広く使われているものがいろいろあります。

主な論文と著書

  1. 新出・高田・藤田,「拡張BDI論理TOMATOを用いた確率的状態遷移のモデル化とその応用」,情報処理学会論文誌, 2011 (to appear)
  2. 新出・高田・藤田,「拡張BDI論理TOMATOesによる協調行為のモデル化と応用」,人工知能学会論文誌, Vol.26, No.1, pp. 13--24, 2011
  3. 高田・新出・藤田,「拡張BDI論理TOMATOesを用いた強化学習のモデル化について」, 人工知能学会論文誌, Vol.26, No.1, pp. 156--165, 2011
  4. 新出,「自律エージェントの論理モデル」(解説記事),人工知能学会誌 Vol.25, No.3, pp. 419--428, 2010
  5. NIDE,N., S.Takata, M.Fujita, `BDI logic with probabilistic transition and fixed-point operator',Proc. of CLIMA '09, pp. 71--86, 2009
  6. 櫟・高田・新出,「BDIアーキテクチャにおけるコミットメント戦略を実現するための形式的検証手続き」,電子情報通信学会論文誌, Vol. J89-D No.6, pp. 1213--1224, 2006
  7. 新出・高田,「意図に関する論理体系」(解説記事),人工知能学会誌 Vol.20, No.4, pp. 425--432, 2005
  8. 高田・新出,「意図に基づくエージェントアーキテクチャ」(解説記事),人工知能学会誌 Vol.20, No.4, pp. 433--440, 2005
  9. 新出・高田・櫟,「エージェントの相互信念を扱う拡張BDI logicの演繹体系」,情報処理学会論文誌 Vol.46, No. SIG2(TOM11) pp. 85--99, 2005
  10. Takata, Igarashi, Nide, Enomoto, Mase and Nakatsu, `Design of Rational Agents for Performing Speech Acts Intentionally in Multiagent Environment', Systems and Computers in Japan, Vol. 34, No. 8, pp. 77--88, Wiley Periodicals, 2003
  11. 新出・高田・櫟,「合理的エージェントの心的状態に関する整合性の実現と応用について」,電子情報通信学会論文誌 Vol.J86-D-I No.8 pp. 514--523, 2003
  12. 新出・高田,「BDI Logicのsequent calculusによる演繹体系」,コンピュータ・ソフトウェア Vol. 20 No.1 pp. 66--83, 2003
  13. NIDE,N., S.Takata,`Deduction Systems for BDI Logics Using Sequent Calculus', Proc. of AAMAS '02, pp. 928--935, 2002
  14. NIDE,N., S.Takata, T.Araragi,`Deduction Systems for BDI Logics with Mental State Consistency', Proc. of CLIMA '02, pp. 123--135, 2002
  15. T.Araragi, S.Takata, N.Nide,`A verification method for a Commitment Strategy of the BDI Architecture',Proc. of CLIMA '02, pp. 109--122, 2002
  16. 高田・五十嵐・新出・榎本・間瀬・中津,「マルチエージェント環境において意図的に言語行為を遂行する合理的エージェントの基本設計」,電子情報通信学会論文誌 Vol.J84-D-I No.8 pp. 1191--1201, 2001

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