ライフスタイル研究センター

奈良女子大学生活環境学部のライフスタイルに関する研究を紹介します。

どんな研究?

 

 

 

1. 住空間における収納計画に関する研究

−ライフスタイルの変化に伴う−

研究内容
【目的】収納は生活の質を左右する重要な要素であり、住空間における人・生活スタイル・モノの関係を投影する。平成17年度今井研究室調査「ライフスタイルの変化に伴う住宅収納の変化とこれからの収納スタイル」では、人々のライフスタイルと住宅収納に影響を与える地球環境問題、男女共同参画社会、情報化の進展の3つの社会的変化に着目した。ライフスタイルの変化と住宅収納の現状および問題点から、住宅における季節外の収納空間、リサイクル資源・資源ゴミの一時保管場所、ゆとりの収納空間、家族全員が把握しやすく使いやすい家事用品・生活用品の収納、情報機器や関連用品を考慮した収納計画の必要性が確認された。本研究では引き続き3つの社会的変化に着目し、ライフスタイルの変化に伴うこれからの生活スタイルと収納空間のあり方を考える。リサイクル資源の保管、日常的な備え、家事生活スタイル、住宅におけるパソコン周辺機器と関連用品の置き場に加え、収納計画に大きく影響を与える衣に関する生活スタイルと収納の現状および問題点を分析し、これからの収納空間のあり方を提示することを目的とする。

【方法】〈メーカー営業者担当者〉調査:大手住宅メーカー営業担当者を対象とした質問紙調査。調査期間は20076月、電子メールによる配布・回収、有効サンプル数218を得た。

〈住宅・居住者〉調査:全国の大手住宅メーカー独立住宅を対象とした質問紙調査。調査期間は200711月、郵送による配布・回収により、世帯票256、個人票572(世帯主289、配偶者283)の有効サンプル数を得た。有効回収率は85.6%である。

【結果】〈メーカー営業者担当者〉調査から、営業担当者の視点における、住み手の住宅収納に対する意識、要求の高さとその漠然さ、また住宅メーカーの住宅収納に関する知識、生活を具体的に考慮した収納計画の技術等の不十分さが明らかになった。

〈住宅・居住者〉調査から、リサイクル資源の保管や日常的な備えに関する、台所や勝手口および玄関の利用状況と収納に対する不満より、住宅の内と外のつながりを考慮した収納空間の必要性が明らかになった。また、家事に対する男女の意識と相対した、性別役割分業がいまだ根強い家事状況、帰宅後の更衣、洗濯スタイルおよび衣類の収納に対する不満が明らかになった。男女共同参画を前提としたこれからの家事生活スタイルにおいて、家族や夫妻の生活リズムを考慮した収納空間が必要である。さらに、パソコンや周辺機器を使用する空間と置き場に対する不満、住宅における仕事や趣味の空間に対する夫と妻の要望より、各空間に対応したパソコン周辺機器の置き場、関連用品の収納空間の必要性が明らかになった。今後の住宅収納計画において、これらの視点を考慮することが必要である。

 

2. 無作為化比較試験による栄養教育および運動教育の減量効果に関する研究

食物栄養学科 伊達ちぐさ・岡本尚子・田路千尋




研究内容
肥満の予防は,生活習慣(ライフスタイル)の改善を徹底することが基本であり,栄養教育と運動教育が重要であると考えられている.我が国においては一般的には,栄養教育と運動教育を組み合わせて実施されているが,栄養教育と運動教育を組み合わせて行うと,各々を単独で実施した場合より効果が高いことを科学的に検証した研究はない.そこで,体重が正常域の高値から軽度肥満と判定された地域住民を対象に,交互法による無作為化比較試験(Randomized Controlled Trial, RCT)の研究デザインを用いて,肥満予防のための栄養教育と運動教育の効果を科学的に検証する目的で,以下の研究を実施した.

奈良県K市および近隣の奈良県K町住民で,2006年度に基本健康診査を受診した者のうち,年齢(歳)が40以上70未満,BMI(kg/m2)が24以上28未満の男女を対象とした.食事指導を既に受けている可能のある疾患(例えば糖尿病等)の既往がある者と現在治療中の者は除外した.健診結果で適格者と判定された896名に,減量を目的とした「元気はつらつ健康教室」(以下,健康教室)への参加勧奨文書を郵送した.研究の目的や実施内容などを説明する会に出席し,健康教室の内容をじゅうぶん理解した上で研究に参加する同意書を提出し,本研究のベースライン検査を受けた62名を最終的な対象者とした.

健康教室は栄養教育と運動教育による6か月の介入で,BMI7%減少させることを目標とした.対象者62名を,地域・性・年齢階級の層別に4群(A群,B群,C群,D群)に無作為配置し,A群(16名)は栄養教育と運動教育の組み合わせ,B群(15名)は栄養教育のみ,C群(15名)は運動教育のみ,D群(16名)は対照とした.健康教室は,開始後13か月の間に計4回,46か月の間には毎月1回の合計7回開催された.栄養教育は,管理栄養士が個人別に面接による食事指導と,集団指導での食事教育を行った.運動教育は,健康運動指導士が集団での運動指導を行ったが,日常的には歩行数を増加させるように指導した.1回の健康教室で,A群は栄養教育1時間と運動教育1時間の合計2時間,B群は栄養教育2時間,C群は運動教育を2時間受けた.6か月の健康教室終了後,続く6か月間にD群はB群と同様の内容で栄養教育を受け,ABC3群は介入を受けない自己管理期間とした.実施期間は20071月から20083月であった.尚,本研究は奈良女子大学生活環境学部研究倫理審査委員会の審査を受け,承認を得て実施した.

 最初の6か月間の介入期間終了後4群とも有意にBMIは減少した.減少割合は,A群で−6.6%,B群で−5.3%,C群で−2.3%,D群で−2.2%であった.栄養教育と運動教育を組み合わせた場合の減少割合が最も高く,目標の7%に近かった.しかし,対照群でも約2%減少したため,正味の減少割合は約5%であった.栄養教育のみでは正味約3%減少した.運動教育のみでは対照群と同程度しか減少しなかった.

 栄養教育と運動教育を組み合わせて実施した群でBMIの減少効果が最も高く,続いて栄養教育のみの群で減少した.運動教育のみでは,減量の効果が認められなかった.

 

3. 動脈硬化危険因子としてのセラミドに関する研究について下記の論文を発表した。

食物栄養学科 小城 勝相・市 育代




研究内容
 生活習慣病の代表である粥状動脈硬化発症においては細胞死や増殖などが種々の細胞に惹起される。動脈硬化にはコレステロールが重要な役割を果たすとされるがコレステロールは細胞膜の重要な構成成分であり、それ自体の毒性は低い。一方、種々の細胞に細胞死を引き起こすセラミドがコレステロールと似た挙動をする場合には、コレステロールではなく実際はセラミドが動脈硬化の真の危険因子である可能性がある。

 2006年、我々はヒト血漿中のセラミドと総コレステロール、LDLコレステロール等と有意な相関を示すことを明らかにした。そこで、ヒト動脈硬化モデル動物であるアポE欠損マウス(apoE-/-)にコレステロール食を8週間与えた。その結果、血漿コレステロールが増加すると共に数種類の血漿セラミドが増加していた。これより、動物実験においても血液中のセラミドとコレステロールの間には相関があり、血漿セラミドは新たな動脈硬化の危険因子であることが示唆された。

 

Effects of dietary cholesterol on tissue ceramides and oxidation products of apolipoprotein B-100 in apoE deficient mice. I. Ichi, Y. Takashima, N. Adachi, K. Nakahara, C. Kamikawa, M. Harada-Shiba, and S. Kojo, Lipids, 42, 893-900 (2007).

 

4. 奈良女子大学食教育推進フォーラム”子どもの明日を拓く食教育II”

食物栄養学科 塚本幾代




研究内容
フォーラムは,昨年に引き続き,子どもの明日を拓く食教育を,学校教育の中で,さらに,地域の中でいかに推進していくかをテーマに開催された。全体講演会と子どもの発達段階の各ステージにおける食育に関するテーマ別に5つの分科会(AE)に分かれて,発達段階に応じた食育の理論と実践について議論が深められた。

参加者のアンケート結果によると、参加者のほぼ90%が,講演あるいは,各分科会において,専門家による講演・報告,参加者の活発な討論はとても参考になり,新しい知識・考え方・食育に関する業務に役立つ情報が得られたと回答しており,食育の推進・発展に非常に有益であったと思われる。

栄養教諭・職員の参加率(約70%)も高く、栄養教諭の指導内容のより深い理解と実践の推進・普及にも大きな成果をあげた。

. サンスクリーン(日焼け止めクリーム)の紫外線ブロック性の評価

稲福夏樹,米田守宏




研究内容
[
目的]オゾン層の破壊により、紫外線が問題視されている。この紫外線を防御する、私たちに身近なサンスクリーンを、UV分光特性、UV強度法の測定により評価する。

[方法]市販のサンスクリーン11種を資料に用いた。塗布条件は、規定値の標準量、1/2倍量、2倍量の3段階とした。分光特性の測定はCCDアレイ型小型UV/可視分光器を用いた。また、UV強度法によりUVA透過率を求めた。

[結果]分光透過率は標準量、2倍量でほぼ0%であった。塗布量を1/2にした場合では、波長が約315nm以上(UVA領域)で、0%〜21%程度の透過が見られた。しかしどの塗布条件においても、15%以上透過する資料があった。

 

 

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