平成26年新年互礼会を開催しました。(1/6)

    

平成26年1月6日に行われました平成26年奈良女子大学新年互礼会より、奈良女子大学長 今岡春樹による年頭のご挨拶を掲載しております。

皆さま 明けましておめでとうございます。これから、年頭の挨拶として昨年を振り返るとともに、今年の予定と希望を申します。

 まず平成25年4月を振り返ります。野口前学長からバトンタッチがあり、4月2日にこの場で新理事・副学長等を紹介しつつ、「学長就任の挨拶」を行いました。
 挨拶ではまず、平成26年4月から予定している学部を越えた大型の改組の申請を成功させたいと述べました。幾つかの修正を経て8月末に申請の許可が下りました。教員免許については今年の2月初旬の教員養成部会からの回答結果を待つことになりますが、ゴールが見えている状況です。今年から実施される理学部の大括り入試、生活環境学部の情報系、スポーツ系、臨床心理系の入試動向に注目しています。
 次に「ミッションの再定義」、つまり本学の強みについて述べました。本学は「全国から集まり全国で活躍する女性リーダーの育成」が大学全体のミッションです。また、文学部・理学部・生活環境学部のキーワードをそれぞれ「古都」・「理科教育」・「設計」と述べました。3学部、特に文学部と生活環境学部については最終校正段階に入っており、今週にその詰めを行います。ミッションの再定義は、目立つものを一言で言ってください、ということになります。今後その目立つものに教育資源を集中することになります。
 最後に、本学の目標を「明るい大学」にしたことを述べました。学長の仕事は意思決定ですので、選択に迷う二つの案がある場合は、どちらを選択することが大学をより明るくするかを基準として判断することを宣言しました。このことは私の在任中は変わらないと思います。
 続いて、昨年にあった主な出来事を述べます。 4月、大学の予算が厳しい状況でしたので、学内の各組織に対し緊縮財政をお願いしました。2013年度も第3四半期を終え、良いバランスで運営を進めていると感じています。
 また、「女性研究者研究活動支援事業」、「地(知)の拠点整備事業」、「博士課程教育リーディングプログラム」2件、「国立大学改革強化推進補助金」など、様々な公募事業に申請を行いました。「国立大学改革強化推進補助金」の結果はまだ出ておりませんが、残りは残念ながら不採択となっています。これらの失敗から様々なことを学び、次に生かす手がかりを得ましたので、決してくじけてはいません。ご尽力いただいた関係諸氏にこの場を借りてお礼を申します。
 10月には大学機関別認証評価に係る訪問調査がありました。改善を要する点として、単位の実質化、教員評価、図書館の充実などが指摘されました。大いに参考になりましたので、できることから着手しています。なお、毎年の法人評価では学部を越えた改組や男女共同参画推進機構の活動内容について満点をいただきました。
 5月には事務局各課長とのヒアリングを実施しました。また、7月には役員と事務職員との意見交換会を行いました。事務職員の思いが色々と理解できました。職員は出身母体が全国区・関西ブロック・プロパーとそれぞれ異なっており、そのバランスを取ることは永遠の課題であると思いましたが、事務職員が明るくなると大学が明るくなると考え、改善をしました。
 また、附属小学校、附属幼稚園のイベントに参加し、附属中等教育学校も含めてそれぞれ現場が抱えている問題を理解しました。大学の教員という立場では強く意識しないのですが、附属学校の教諭にはクラス担任という大きな役割があり、単純に授業の非常勤講師を手当てするだけでは問題の解決とはならないことを理解しました。附属学校は少子化の波を大学より一歩先に受けることもあり、注意深く見守っています。
 同窓会の佐保会に関しましては、8月に昭和58年卒業30周年記念同窓会にお招きいただきました。卒業生の半数が卒業30年後に集うという、想像を越える規模の同窓会で、そのパワーに圧倒されました。本年は佐保会設立100周年となり、在学生に対する奨学金も増額していただきました。佐保会は本学の貴重な財産と考えています。

 これから国立大学を取り巻く現状をお話します。国立大学の改革プランが11月26日に出ました。詳細は1月23日木曜日の13時から行います「奈良女子大学全学フォーラム」で述べますが、大学が大きな曲がり角に来ている、明治維新や敗戦時に匹敵する大きな変化の時期に来ていることをぜひ認識してください。キーワードを述べますと、「イノベーション」、「グローバル」、「年俸制の導入」、「ガバナンス強化」があります。さらに「教養改革」と「入試改革」がこれらに連動しています。
 この大きな変化は、日本が人口減少というフェーズに入ったことに起因します。2007年から総人口が減少し始めました。これは未体験の大事件です。2018年から18歳人口が減少しますので、大学としてはマーケットが縮小します。もっと未来を見ますと2060年には労働人口が現在の半分になることが予測されています。2000年生まれの子供が60歳になったときの日本の姿です。教育の効果が現れるのは時間がかかります。先ほど大学卒業後30周年の話をしましたが、22+30で52歳。働き盛りです。未来の日本は皆さんのお子さんやお孫さんの日本ですが、その未来の日本のために「今の大学教育」が問われています。
 先ほど挙げましたキーワードについて説明します。
 「イノベーション」は資源を持たない日本が生き残るために工業立国の骨の部分になります。
 「グローバル」は会社や大学が日本人だけではやっていけないことを意味します。やがてここにお集まりの皆さんの中に2割3割が外国人になることを想定してください。多文化共生を実現しなければ組織が持ちません。英語も必要でしょうが、話す内容を持つことがより重要です。そこで「教養改革」が必要になります。本物の教養を身につけなければ生きていけません。「グローバル」と関連して留学生(出る側も受け入れる側も)倍増計画があります。世界に伍していける日本人人材の育成、日本企業で活躍する外国人の育成が狙いです。
 「年俸制の導入」は外国人教師の比率を圧倒的に増やすための方策です。30年、40年勤めないと十分はもらえない退職金をなくす制度です。大学の教員の10%から20%を年俸制に変える計画です。
 話を「入試改革」に移します。センター試験がやがて廃止になります。現在120万人いる18歳人口に対して60万人の大学生定員があります。二人に一人の割合で、希望すれば大学に入れる時代になりました。大学全入時代の問題は高校生が勉強しなくなったことにあります。トップグループは相変わらず勉強をしていますが、中堅層がまったく勉強をしなくなりました。このままでは将校はいるが下士官がいない状態が日本に訪れます。従来の入試はもはや高校生が勉強するためのインセンティブでなくなりました。重要なのは高校生が勉強に興味を持つような入試にすることです。この入試改革は「高大連携」や「教養改革」そして「専門改革」と連動するものです。附属学校とタッグを組んで対応するつもりです。
 「ガバナンス強化」は以上のような課題に対して迅速に対応できるように、学長の権力の拡大を意味しますが、詳しくは最後に述べます。
 高齢化に伴って、社会保障費が毎年1兆円以上増加しています。平成26年度予算では1.4兆円増加しました。全国立大学法人の運営費交付金の総額が1.1兆円です。国立大学法人になりもうすぐ10年目になりますが、運営費交付金は毎年1%減少しており苦しい財政事情となっています。
 以下、平成26年度の本学に係る財務事情についてご報告しておきたいことがあります。
先ずマイナス面として
 ・本年1月1日から55歳以上の昇給が停止します。
 ・消費税が上がります。
 ・東京オリンピックに向けて、当分施設関係の予算は期待できません。
 ・記念館の耐震改修工事を平成26年から27年に行うため大学からも費用を捻出する
  必要があります。
次にプラス面として
 ・平成25年度の補正予算で理学部第2学科に設備整備費補助金が付きました。
 ・平成26年度は継続している2件の研究プロジェクトに加えて新規に理学部第1学科に
  教育プロジェクトが付きました。
 ・平成26年度施設整備についてはライフライン再生事業が付きました。
 このような状況から平成26年度と27年度に、「学長のリーダーシップ発揮」特別措置103億円の募集があり、アタックします。また、「年俸制導入促進費」も考える必要があります。
 最後に「ガバナンス強化」について述べます。既に学長は人・金・物について権力を持っています。教員人事に関しましては、ポストの配置は学長専決事項でした。しかし、教員の選考については従来学系長に推薦依頼をする慣行がありました。しかし、全学的・戦略的観点からの人事に関しては学長直下の審査会で選考をする方針を決めました。様々な事業にアタックして予算を獲得しないと、自然にやせ細る構造になっています。一方提案されている事業は対症療法という色彩もあり、本質を見失わないように心がける必要があります。

 少し長くなりましたが本年も「本物志向で明るい大学」を目指し様々な取り組みを行いますので、皆さまのご協力をお願いいたします。

平成26年1月6日    奈良女子大学長 今 岡 春 樹


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