平成31年新年互礼会を開催しました(1月4日)

 皆さま明けましておめでとうございます。これから年頭の挨拶として、昨年を振り返るとともに、今年の予定と希望を申します。
  平成30年は第3期中期目標・中期計画期間の3年目でした。運営費交付金の1%削減は議員連盟等のご努力があり、削減自体はストップしています。一方、重点支援の枠組みで、ビジョン・戦略・取組みを確定してその評価によって1%削減に対する再配分額が決まる仕組みとなりました。本学は平成28年度予算で92.6%、平成29年度で81.3%、平成30年度は持ち直して98.9%の再配分率でした。平成31年度は、この仕組みが大きく変わります。1%を再配分するという数字が10%に代わり、各大学で決めた戦略指標ではなく、上から降りてくる共通指標も使われ、その額が大きいのです。今回示された共通指標を申します。4指標があります。@会計マネージメント改革の推進状況A教員一人当たり外部資金獲得実績B若手研究者比率C人事給与・施設マネージメント改革の推進状況、です。再配分額はまだ通知が来ていません。
 昨年は5年連続の人事院勧告による給与とボーナスアップがありました。ボーナスについては5年で0.5カ月アップですので、もらい切り予算では大きな影響力があります。状況は厳しいのですが、緊縮財政をお願いしました結果、平成30年度予算は順調に推移しています。
 さて、これから平成31年度の話をします。平成31年の注意点は第3期の4年目になるということで、中間評価対象の最終年度になります。実績が要求されます。
 重要事項は五つあります。
 まず一つ目ですが、平成27年度に重点支援の枠組みAを選んだ影響についてです。世界型、特色・拠点型、地域型の中で特色・拠点型を選んだのですが、教育拠点、研究拠点、国際拠点を作るための構想を行ってきました。教育拠点については「卓越大学院」予算獲得のため、構想を練りました。残念ながら不採択という結果でしたが、再度挑戦します。研究拠点については、大和・紀伊半島学研究所の活動を応援します。国際拠点についてはバングラディシュのダッカ大学と学生交流協定を結びました。いよいよ留学生を受け入れる年になりました。うまく成功するようにサポートします。国際交流は、国際交流担当副学長を中心に、受け入れ及び派遣留学生の数値目標に向かって鋭意努力を行い、着実に数値実績が上がっています。この活動も応援します。
 二つ目として、地(知)の拠点大学による地方創生推進事業、いわゆるCOC+に採択された影響です。参加大学である奈良高専と奈良県立大学とも協力して行っています。現在の3回生、4月から4回生の奈良県内への就職率向上が具体的な数値目標です。大学としては「地域志向科目」の必修化に向けて検討しています。地域創生担当副学長を中心に、奈良県内の企業研究会を開催する等の活動を活発に行っており、強調しますが仕上げの年になります。
 三つ目がなでしこ基金関連です。2019年5月1日、奇しくも新元号と同じ日になりますがあと5か月後に本学創立110周年を迎えます。卒業生や佐保会から多額のご寄附を頂いています。教職員の皆様にもご寄附をお願いいたします。110周年を記念して、学生寮を建てたいと計画しています。学生が参加して設計に加わっています。木造でメゾネット式の戸建てイメージの学生寮です。
  四つ目は、平成32年度に予定している大学院博士後期課程の改組です。人間文化研究科長はじめ皆様のお力で、設置の認可に向けて努力しているところです。これまでの博士後期課程と異なって、博士前期課程と直結したシンプルな構造にすること、研究科の名称に「総合科学」が入る予定であること、一度博士後期課程に進学して途中で断念した学生に対して「再チャレンジ型女性研究者支援制度」の導入、修士号取得後数年を経て博士後期課程に入学する学生に対して「奈良女子大学ホームカミング博士号取得支援制度」の導入など新しい企画があります。博士前期課程の6年一貫制度と同様に再チャレンジ型制度などでも、なでしこ基金による支援が欠かせません。
  五つ目ですが、一法人複数大学制度関連の検討計画です。奈良教育大学と本学が「法人統合」して、そのことを起爆剤として、奈良の場所を「学問の匂いで満ち溢れた場所」にする夢を持っています。東京とは違う、京都や大阪とも違う、「奈良に行って学問をしたい」という場所にしたいと思っています。奈良教育大学との法人統合は平成34年度、第4期目の初年度からと考えていますが、それまでに、教養教育の充実・強化、教員養成の高度化、奈良の地での工学人材の輩出、の三本柱を検討しています。共同教育課程としての工学部設置は当初平成34年度からと考えていましたが、平成33年度設置の方向で検討しています。タイトなスケジュールになりますがご協力をお願いします。平成33年度は入試改革の年になります。アドミッションセンターを中心に入試改革特に高大接続プログラムを検討していますが、日本全体が大きな変化を迎える年になります。
  以上5点を述べました。拠点化への努力、COC+、なでしこ基金による学生寮、博士後期課程の改組、法人統合、です 。
 話題を人事と予算に移します。4月から、私は学長2期の3年目になります。先ほど述べました項目の全てが継続していますので、原則として役職関係に大きな変更はありません。ただし、新しい副学長として男女共同参画担当を設けます。一法人複数大学制度、新しい工学部、再チャレンジ型制度など全てにかかわる「女性」をキーワードとした課題が出てきました。女子学生と女性の教職員が勉強しやすい、そして仕事がしやすい「環境」について必要最低限のものと最先端のものを考えてもらい、本学のあらためての基礎としたいと考えたからです。
  平成31年度の予算ですが、先ほど述べた10%の再配分、学術情報センターの計算機リプレイス、消費税アップ、学生寮のための積立が想定されます。もう一つ「働き方改革」関連法案について述べておきます。この4月からの「改正労働安全衛生法」における「労働時間の状況の把握」の義務化です。このような理由のため、緊縮財政路線を継続します。
 
 最後になりますが、再度強調します。大変化時代になります。激甚変化社会です。昨年末に経団連が「新卒一括採用」制度の廃止を宣言しました。日本経済は土壇場に来ていると考えます。企業が稀にみる収益を上げていますが、円安誘導による株高でしかありません。見識のある企業人は砂上の楼閣を強く意識しています。人の育成を行う大学の「動きのにぶさ」にいら立ち、財務省は強硬手段に出ました。国立大学で、1%の拠出金を競争により再配分するという3年間続いたことを、10%に変えたのです。内閣府の総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)は「第3期の間に、成果に係る共通指標に基づく配分を抜本的に拡大するとともに、第4期期首には、教育研究については、評価に基づいて運営費交付金全体を配分する仕組みとするべき。」と述べ、10倍にすること、そしてそれを拡大することを後押しする方向です。「倒れるものが出なければ気が付かない」とでもいうようです。
 これを暴挙と言いましたが、よく考えてみると、入口である高校生には「考える力や主体性を要求する入試改革」、出口である学生の就職には「ポテンシャル採用から能力採用への大転回」が起こっています。大学が変わらないのはある意味おかしいことなのです。このような変化のポイントは、「変化のスピード感」だと思います。
  頭を柔軟にして、変化に対応できるものだけが生き残る時代です。重ねて皆様のご協力をお願いして、年頭のあいさつにいたします 。

平成31年1月4日 奈良女子大学長 今岡春樹



※第3期中期目標期間中(2016年度〜2021年度)には、各国立大学が形成する強み・特色を最大限に生かし自ら改善・発展する仕組みを構築することにより、持続的な「競争力」を持ち高い付加価値を生みだすことが求められています。そのための方策の1つとして、国立大学の機能強化の方向性に応じ運営費交付金を配分するため、三つの重点支援の枠組が設けられ、各大学がいずれかを選択することとなりました。重点支援Aとは「主として、専門分野の特性に配慮しつつ、強み・特色のある分野で地域というより世界・全国的な教育研究を推進する取組を中核とする国立大学を支援」するものです。
[参考] http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/062/gaiyou/1358931.htm