
ジェンダー言語文化学
学部共通プロジェクト【ジェンダー言語文化学】
「ジェンダー言語文化学」は、奈良女子大学文学部の共通プロジェクトとして、2005年度に始動しました。
ジェンダー言語文化学プロジェクトとは?
私たちが日常使っている「ことば」や、読んでいるものは、生物学的な性差とは別の、社会的・文化的・歴史的な性の枠組みによって強く影響を受けるとともに、そのような性のあり方を強く反映しています。この、ジェンダー(社会的・文化的・歴史的な性のあり方)の視点を用い、「ことば」や文学を読み解く方法を考える場を充実させるために作られたのが、「ジェンダー言語文化学プロジェクト」なのです。
特に「ことば」や文学には、時代の風潮や思想が色濃く映し出されるため、女性・男性といった性のあり方がどのように認識され、変遷を遂げたのかということを知るためには、この上なく貴重な材料となります。また、ジェンダーを扱う領域は非常に広いため、社会学・生物学・医学など他分野との連携を深めることで、学際的研究としての成果も期待できます。
こんな授業を行っています
ジェンダー言語文化学概論
まず、「ジェンダー」という概念の基礎を学びます。その上で、ことばや文学にあらわれるジェンダーの問題を、具体的に考察していきます。例年、テレビアニメ「サザエさん」を題材に「会話とジェンダー」に関する考察を行ったり、その年のテーマに沿った文学作品を選び、ジェンダーの視点から読み解く方法を講義しています。テキストとして、学科で作成した『恋をする、とはどういうことか?』(ひつじ書房)を使用しています。
-
扱ったテーマの例
「女性が作家になるということ」・「男装をした女性の『私』」・「魔女と逸脱する女性たち」・「結婚と女性」「恋愛小説の読み方」・「男同士の物語」など
ジェンダー言語文化学演習
概論を受けつぐこの授業では、ジェンダー理論についての理解を深めるために、「フェミニズム批評」や「ジェンダー批評」についての解説を行ったあと、作品読解の方法論を示します。その後、いくつかの作品を選んで読み、ジェンダー的読みの実践をプレゼンテーション形式で行っています。
-
扱ったテーマの例
「赤ずきんちゃん」・「白雪姫」・「シンデレラ」・「人魚姫」・『斜陽』(太宰治)・『赤毛のアン』(モンゴメリ)・『きらきらひかる』(江國香織)・『薬指の標本』(小川洋子)・『肉体の悪魔』(ラディゲ)など
ジェンダー言語文化学特殊研究A・B
前期に開講するAは、おもに欧米言語・文化を対象とし、複数の教員がオムニバス形式で担当しています。後期に開講するBは、日本アジア言語・文化を対象としています。いずれも、担当する教員が、それぞれの専門分野の見地から、ことばや文学にあらわれるジェンダーの現象について解説していきます。
シンポジウム・講演会
シンポジウム
-
第1回 「文学における女性と職業」(平成17年度)
【パネラー】
成田美鈴(日本学術振興会特別研究員)「19世紀ガヴァネス小説におけるガヴァネス像の系譜」
劉小俊(同志社女子大学・助教授)「現代中国文学にみる保姆(パォムー)の境遇」
村田京子(大阪府立大学・教授)「娼婦の文学的肖像―19世紀フランス文学における娼婦像―」 -
第2回 「少女・小説・ジェンダー」(平成20年度)
【パネラー】
吉田純子(神戸女学院大学・教授)「Katherine PatersonのLyddieにみるフェミニスト的主体構築」
赤松佳子(ノートルダム清心女子大学・准教授)「刊行百周年を機に読み直す『赤毛のアン』」
【コメンテーター】
藤井佳子(本学人間文化研究科・助教)
高岡尚子(本学文学部・准教授) -
第3回 「クィアと文学」(平成21年度)
【パネラー】
中川千帆(本学人間文化研究科・准教授)「クィアとはなにか」
白水紀子(横浜国立大学・教授)「台湾セクシュアル・マイノリティ文学概観」 -
第4回 「女どうし/男どうし―文学に見る同性関係」(平成22年度)
【パネラー】
高岡尚子(本学文学部・准教授)「ホモソーシャルなあり方―19世紀フランスの場合」
吉川佳英子(京都造形芸術大学・准教授)「20世紀フランス文学にみる「性」の曖昧-プルーストやコレットなど-」 -
第5回 「ジェンダーとパフォーマンス」(平成23年度)
【パネラー】
戸谷陽子(お茶の水女子大学・准教授)「パフォーマンスアートの系譜―アメリカのジェンダーパフォーマンスを中心に」
【ディスカッション】
中川千帆(本学人間文化研究科・准教授)
西出良郎(本学文学部・准教授) -
第6回 「私語りとジェンダー」(平成24年度)
【パネラー】
飯田祐子(神戸女学院大学・教授)「私語りとジェンダー」
【ディスカッション】
吉川仁子(本学文学部・講師)
鈴木広光(本学文学部・教授) -
第7回 「恐怖・嫌悪・欲望とジェンダー」(平成26年度)
【パネラー】
玉田敦子(中部大学・准教授)「18世紀フランスにおける文化的マチズモの台頭―「習俗」と「趣味」をめぐって」
倉田容子(駒澤大学・講師)「<閉ざされた人間>たちの世界―芥川龍之介における老いと死」
【コメンテーター】
中川千帆(本学文学部・准教授)
高岡尚子(本学文学部・教授) -
奈良女子大学/神戸女学院大学 共同ジェンダー・シンポジウム「女子大学で文学を!?」(平成29年度)
【パネラー】
高岡尚子(本学文学部・教授)「薄暗い、本の咲く谷間からー文学・フランス・ジェンダーをつないで語り合うー」
溝口薫(神戸女学院大学・教授)「英文学、ジェンダー、女子大ーまだ終わらないミッション」
【コメンテーター】
吉川仁子(本学文学部・准教授)
講演会
-
連続講演会2006(平成18年度)
【講演者】
第一回:中川成美(立命館大学・教授)「実践理論としてのジェンダー ― フェミニズム・クイア・文学 ―」
第二回:風呂本惇子(城西国際大学・教授)「ヴードゥーの女神たち ― ハイチ系移民女性作家の作品を通して ―」 -
連続講演会2007(平成19年度)
【講演者】
第一回:坂本千代(神戸大学・教授)「ジョルジュ・サンド作『ジャンヌ』とジャンヌ・ダルク ―女の神話の系譜の中で―」
第二回:中山 文(神戸学院大学・教授)「中国女性演劇・越劇の今 ―『天道正義』における近代的女性像の提案―」 -
講演会2013(平成25年度)
【講演者】
木村朗子(津田塾大学・教授)「日本中世物語におけるセクシュアリティ」 -
講演会2015(平成27年度)
【講演者】
江下雅之(明治大学・教授)「日 仏 女性 雑誌」 -
講演会2016(平成28年度)
【講演者】
中村桃子(関東学院大学・教授)「翻訳がつくるジェンダー」 -
講演会2018(平成30年度)
【講演者】
Martine Reid(リード大学・教授)「『異性装』の意味するところ―ジョルジュ・サンドとコレットをめぐって」
※注意:肩書きは当時