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前田研究室<食品衛生・微生物学>


担当教員
前田 純夫 (MAEDA, SUMIO) 
学位・担当科目
農学博士(名古屋大学), 学部担当科目:微生物学、食品微生物学、食品衛生学、学生実験、ほか

研究室の紹介

 当研究室では、食・生活環境中で「新しい細菌はどのように生まれるのか?」という視点から、
 食を取り巻く環境中の「微生物・遺伝子」に関する研究を行っています。


最新成果の紹介:国際誌論文発表(下記全て大学院前期課程修了生が筆頭および共著者)

 2025年2月 web公開 抗生物質は腸内類似の嫌気条件で遺伝子水平伝播を促進する

 2024年9月 web公開 パーシスター細胞形成にはエピジェネティック記憶が働く

 2024年8月 web公開 パーシスター細胞は遺伝子水平伝播能力を有する


【研究の注目点:身近な環境や人体で】
  主な研究対象である《バイオフィルム》とは、固体表面(界面)に出来る微生物の集まりのことです。
 例えば、水廻りのぬめり、コンタクトレンズの汚れ、歯垢などが、身近なバイオフィルムの例です。
 ただ、目に見えない薄いバイオフィルムは、身近なあらゆるモノの表面に形成されていると言ってよい
 でしょう。バイオフィルム内の菌は生存力が強く完全除去が難しいため、衛生環境を重視する食品や
 医療関連の現場では、特別な対策の必要性が注目され始めています。


Biofilm

  図:バイオフィルムの増殖・形成(Monroe D. PLoS Biology2007, 5, e307)

【研究の注目点:学問的視点から】
  このバイオフィルム中の微生物細胞は、基礎微生物学的にも大変興味深い存在です。
 特に、よく実験に用いられる液体培養の浮遊細胞とは、細胞の生理状態が大きく変化していることや、
 さらに詳細に見ると、同じバイオフィルム内でも微小局所環境の違いに応じて多様な細胞が現れること、
 など、バイオフィルムに特有の新現象や新機構が、近年相次いで発見されつつあります。

【最近の研究と新発見】
  当研究室では、バイオフィルム細胞の遺伝子水平伝播に関して、大腸菌モデル系を
 用い、様々な新現象や新機構を発見し、国際学術誌(論文"[1]""[2]""[3]""[4]")や
 海外学会で積極的に発表を行って来ました(大学院生がスペイン・トルコ・ドイツ・
 フランス・イギリス・イタリアなどの国際学会で発表)。
 これらの成果は、朝日新聞や日経産業新聞で報道されました。

  また当研究室では、バイオフィルム内で、抗生物質感受性の細菌が
 一時的な耐性を得てしまうPersister Cell化という現象と、その効果が
 数日〜数週間もの長期間記憶される現象を発見し、 国際誌[1] [2]で発表しました
 (大学院生が、ドイツ等の国際学会で発表)。
 この成果は、日本経済新聞や朝日新聞で報道されました。

【世界各地で生まれる新型食中毒菌】
   遺伝子水平伝播とは、細菌から細菌へ遺伝子が移る現象で、新たな食中毒菌多剤耐性菌
  主な発生原因となっています。
  例えば近年、 欧州で大規模な食中毒を引き起こして世界的問題となった病原性大腸菌O104
  比較的最近、環境中のどこかで、病原性遺伝子や抗生物質耐性遺伝子を多重に獲得して生まれた
  新しい菌であることが明らかとなっています。
  近年、日本国内で焼肉店のユッケなどから大規模感染が発生したO111O157なども、この
  遺伝子水平伝播によって生まれた菌です。
  また近年、畜産水産での抗生物質の日常的使用による 耐性菌の「食べ物から人」ルートでの
  発生と世界的蔓延が懸念されています
   (当研究室での検出事例)。

【現在の取り組みと将来目標】
     我々は、この世界的食リスク要因である、遺伝子水平伝播とPersister Cellに関して、
  その環境中での発生要因や制御機構の解明、また評価モデル系の構築など、
  さまざまな角度から研究に取り組んでいます。
  この研究は、将来的に、食環境中での新型有害細菌の発生を防ぐ新技術や管理システム
  の進歩をもたらし、安全安心な食環境づくりに貢献できると考えています。

連絡先(eメール):smaeda(アットマーク)cc.nara-wu.ac.jp
現在の研究テーマ
1.微生物バイオフィルムにおける遺伝子水平伝播に関する研究
    遺伝子水平伝播とは、遺伝子がある細胞から別の細胞に移動する現象です。
   抗生物質耐性や病原性を司る遺伝子が移動することで、スーパー耐性菌や新病原菌が発生します。
   当研究室では、バイオフィルム中でこの遺伝子水平伝播が起きやすいことを発見しました。
    
2.細菌のパーシスター細胞化とその記憶現象に関する研究
    パーシスター細胞とは、本来は抗生物質感受性の細菌細胞が一時的に耐性化した細胞です。
   耐性遺伝子を獲得することなく耐性化するので、細菌感染の抗菌薬治療の際に根絶が難しく
   なる原因となっています。
   当研究室では、バイオフィルム中でパーシスター細胞が顕著に増加し、一度出来ると環境が
   変わっても長期残存する記憶現象を発見しました。


これまでの主な発表論文や活動はこちらのリンク

過去の研究分野
   大腸菌の遺伝子活性化機構、肝細胞の機能(主に細胞死)制御、など。



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