教育理念・附属学校としての機能

わたくしたちの教育

 わたくしたちは、教師も子どもも人間らしく生きていくことを念願する。
 すなわち人間としての基本的な欲求を、正しい手段で充足しながら、どこまでも生きぬき、自分で生活をきりひらきつつ、 真実のすがたを求めて納得のいくまでつきとめ、自分を愛するとともに他人をも愛し、互いに尊重し合って生きていく人間でありたいと願っている。
 わたくしたちの教育は、このような立場に立って、子どもの考えかた、感じかた、行いかたを通じて真の子どもらしさを尊重し、 子どもの自我を確立させるように具現したいと考える。こうした考えかたからわたしたちの教育目標を、


  1. 開拓、創造の精神を育てる
  2. 真実追求の態度を強める
  3. 友愛、協同の実現を進める

の3点においている。
 しごと∞けいこ∞なかよし≠ニいう教育構造は、この目標から発したものであって、単なる形態上の区分ではなく、 教育目標のめざす人間形成の立場から、相互に協力的・有機的関係をもって成立するものである。
 すなわち、しごと≠ヘ新鮮な感覚と知性に立って、自由な視点から弾力的に考えることのできる、いわば人間としての幅を育て、 けいこ≠ヘ、事理を究明して本質的に自己をみがき、人間としての深まりを育て、 なかよし≠ヘ、相手を生かし、自己を生かして互いに協同する人間としての結びつきを育てようとするものである。
 この意味で、しごと≠ヘ、自然、人間、社会の真実のすがたを求めて、その知見と視野を拡げ、 身近な現実の問題を追求して新しい社会生活のありかたを洞察させ、 それに向かって自己の生活態度ならびに生活環境をつくりかえていく意欲と実践力を育てることを主眼として、総合的な単元学習の形態をとる。
 けいこ≠ヘ、人間形成の実質的内容となる基本的な能力を、生活の手段として確実に習得させて、しだいにその量を多くするとともに、 質的にみがき、さらに進んで新しい文化を創造する基礎力を養おうとするところに主眼があり、特定の目標に応じた分科的な学習形態をとる。
 なかよし≠ヘ、学校内において、自分の所属する有意義な集団をつくり、その生活に適応しながら、成員の友愛と協同によって、集団生活を改善し、 また新たに建設していくことを主眼とし、学級および学級を解体した小集団による実践的な学習形態を中心とする。
 学習は子どもたちに人間成長のよろこびを感得させるものでありたい。わたくしたちは、以上のような教育構造に立って、 子どもたちが日々一歩ずつ前進するよろこびに支えられて成長していく場を展開し、また、その成長を確認しつつ進みたいと願っている。

附属学校としての機能
―先導的な教育研究・実践を全国に発信―

◆「奈良の学習法」「奈良プラン」
 児童を中心に据え、児童自らが問いをたて(質疑)問いを解く(解疑)学習生活を獲得することを目指す「奈良の学習法」は、 「人間の生涯にわたって続く『学び』という営みの本質」を捉えることを目指す「主体的・対話的で深い学び」と同じところに根差しています。 独自学習―相互学習―独自学習と進む自律的学習、学びの文脈の中で各種能力を育てる「しごと・けいこ・なかよし」という「奈良の学習法」「奈良プラン」での蓄積を、 「主体的・対話的で深い学び、資質・能力を育む」という次世代教育への課題を乗り越えることに役立て、先導的な役割を果たします。
◆新「各種能力指導系統表」
 本校では、戦後の「奈良プラン」樹立と同時に、子どもに育むべき能力へ着目した「各種能力指導系統表」を策定し、その後改編を重ねています。 戦後間もないころから、子どもの能力に焦点をあて指導系統を模索してきたのです。 次期学習指導要領の改訂を見据え、今一度、教科・領域に共通する能力や教科固有の能力を整理し直し、子どもの資質・能力を育む指導系統を明らかにしながら、 学習内容を精選、統合、新設して、新「各種能力指導系統表」を開発していきます。
◆個別最適な学びと特異な才能を育む教育
 子ども自身が個別最適な学びを実現できることを目指し、個性的に自己の学びを自覚化できる指導法を究明します。 また、積極的に「自由研究」の発表を取り入れ、発表のやり取りの中で自分や友だちの個性的な学びの良さに触れさせていくことを通して、 個性的な才能を育む指導法を究明します。この他、5歳児・1・2年生では短期間・集中的に共同活動を行い、体験や情動の言語化と交流を図る「なかよしひろば」を、 4〜6年生では10グループに分かれて個別・共同の探究を進める「グループなかよし」を実施します。 これら、複数学年による「なかよし」活動では個別の探究活動を重視しつつ共同の探究を進めます。 異年齢の中でそれぞれの学びの良さを伝承・発展する活動を通して、特異な才能を育む指導法を究明していきます。
◆幼小一貫教育
 初等教育(幼稚園・小学校)を、初等前期(3歳・4歳)…生活や活動を楽しむ、初等中期(5歳・1年・2年)…生活や活動のふりかえりと見通しの形成、初等後期(3年・4年・5年・6年)…生活や活動の自己組織化の3つの課程に分けて生活・学習を創ります。幼小を通じて、資質・能力を育む視点で一貫教育を進めていきます。 地域密着の教育貢献
◆教育現場での実践指導
 地域の研究指定校や研究拠点校となっている小学校に継続的に出向いて、授業研究に関わって指導助言を行う、地域で実施される研修会の推進役を務めるなど、 教育現場が直面する実践上の諸問題を、具体事例に即して指導していきます。
◆教員研修学校
 年間2回の研究発表会を通じて、子どもが自律的に学ぶ姿を公開して参加者と議論を重ねます。次世代教育セミナーを開催して、本校の教育が、 「主体的・対話的で深い学び」「資質・能力を育む」次世代教育を内包し、その教育実践に即応することを具体的に実証します。 また、全国各地からの長期研修教員、内地留学研究教員、教職大学院生等を積極的に受け入れ、教員研修学校として現職教員のリカレント研修に取り組みます。