奈良の鹿害 川の役割
奈良女子大学生活観光現代GP学生による設計・発信>奈良の鹿害/川の役割
奈良の鹿害 川の役割

・川の役割。
 日本をはじめとしたアジアの国々では河川は水田生態系の一部をなしていました。イネを育てる際に川から水をひくことで、単にイネに水分を与えるのではなく、川水に含まれる養分もイネに与えるのです。また、その過程で川水は浄化されてきたのです。
 しかし今では水田は減少し、さらに水路のコンクリート化、化学肥料と農薬の使用によって浄化機能の低下や環境負担の増加を招いています。
 川の水の汚れの主な原因は、無機栄養源、有機物、寄生虫などの有害生物、水銀などの有害物質です。
 ちなみにこのうち人体に悪影響を及ぼすのは有害生物の一部と有害物質のみなので、川魚や川に住む生物を食べることで、間接的に無機栄養源や有機物などをとることで川をきれいにできる(わずかだけれども)のではないかという考えの先生がいました。
<奈良市の川の現状>
 奈良の川は万葉歌にもいくつもとりあげられています。特に佐保川には、

    佐保川の 清き川原に 鳴く千鳥 かはずと二つ 忘れかねつも

という歌がありますが、その清き川原は今では側壁のコンクリート化やその川筋の固定化による土砂の蓄積で流量が減少したために、今では全くその面影はありません。
 これは猿沢池の脇を流れる率川です。奈良は一見自然にあふれているような感じがし、都市化とは無縁のように思いますが、それは違います。
 奈良も都市化されています。それは、土地を増やすために川にふたをした、暗渠(あんきょ)があちらこちらに見られるという点です。この率川も、上流と下流側は暗渠化されています。
←奥の建物の下から率川は地下にもぐっています(暗渠になっている)。

 暗渠にすることは、土地を広く使えるという利点だけではありません。写真を見てわかるように、とてもきれいといえる川ではありません。暗渠化は汚いものを隠すという作用もあり、また見えないから余計に汚くなるという悪循環のもとになっているのです。
 ちなみにここでのCOD(化学的酸素要求量)は8PPMでした(きれいな水では1~3PPM、とても汚れた水は10PPM程度)。かなり汚いことがわかります。
 このような問題を解決するにはどうしたらよいのでしょうか?
 それは環境負担を減らし、浄化機能を高めることです。また今の河川の現状を知ることがとても重要です。なので、生活地域の環境についての教育などが必要ではないでしょうか。
 企業も努力をしています。大和信用金庫では、預金の0.01%相当分の出資を大和川募金へ組み入れ、水質改善の度合いによって定期預金の金利を上乗せするという大和川水質改善応援定期預金を行っているのです。