鹿による植生の変化

二月堂周辺の景観

川と歌碑

 

3.川と歌碑

これは奈良女子大学北側を流れている佐保川です。青い土が見えます。

 

青丹(あをに)よし 奈良の都は咲く花の 薫うがごとく いま盛りなり

 

ここの青丹は青い土を意味し、奈良でこれが産出したという説もあります。このように大和川を歌った万葉集は数多くあります。率川(いさがわ)について

はねかづら 今する妹を うら若み いざ率川の 音のさやけき

 

という歌があります。率川神社にこの歌碑が立っています。ここ以外で奈良公園周辺でも春日大社、東大寺境内、元興寺などいたる所で歌碑が見られます。歌碑から読み取れる当時の様子を思い浮かべて歴史を感じながら、歩いてみるのも楽しいかもしれません。

 

率川神社は大三輪君白堤が勅命によって創始した奈良市最古の神社です。興福寺・春日大社との関係が深かったのですが、1879年に三輪の大神神社の摂社となっています。

617日の三枝祭は4人の巫女がユリを持って神楽を舞うことからゆり祭りとも言われています。(「奈良市内散歩」 山川出版社)

 

12月の猿沢池近くを流れるこの率川では水面を漂う紅葉が美しいグラデーションをなしています。今は川のほとんどが道路の下に埋まっており、歌と同じ川とは思えませんでした。川の両側、底をコンクリートで覆われた三面構造で景観が損なわれています。最近では川が汚染され、私たちの生活から切り離された形となっているのは残念です。

 

 佐保川、率川、吉城川などの大和川は万葉集で多くでてきて、当時の美しい景観が彷彿されます。今でも春日大社境内の上流までいくときれいな川を見ることができます。下の禰宜道、通称「ささやきの小径」は静かで、特に夏などは涼しくて歩いていてとても気持ちがいいです。かつては高畑に住む春日の神官たちの通勤道でもあったところです。奈良のメジャーな通りから一歩外れたところにも、歴史を感じる奈良の新たな魅力を発見することと思います。