平成26年度奈良女子大学大学院学位記授与式 学長式辞

 

 博士前期課程143名、博士後期課程13名、合計156名の大学院修了生の皆さん、ご修了おめでとうございます。名誉教授の先生方、佐保会理事長、奈良佐保短期大学長、放送大学奈良学習センター所長、育友会会長にはご臨席を賜りまことにありがとうございます。奈良女子大学の教職員一同は、ご来賓の方々と共に、皆さま、本日ご同伴されましたご家族の方々、また各地で本日のご修了をお喜びのご親族の方々に、心よりお祝いを申し上げます。
 「大学は、学術の中心として、高い教養と専門的能力を養うと共に、深く真理を探求して新たな知見を創造し、これらの成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与するものとする」これは、平成18年12月に改正された教育基本法における大学の役割です。昭和22年に施工された旧来の教育基本法にはこの項目はありませんでした。戦後60年を経て、今から8年前に、大学が「奥の院」から現実に引き出され
た瞬間です。平成18年の12月に皆さんは何をしていましたか。平成19年から日本では人口の減少が始まっていますので、「大学よ、表に出てこの危機に対処してくれ」というメッセージです。このメッセージの影響を強く受けたのが、皆さんの世代です。
 日本では現在50%の人が大学に進学します。男女比は大きくは違いません。大学院博士前期課程はまだ少数派です。男女25名ずつ同数の50人クラスで、前期課程へ進学するのは男性2名、女性は1名です。真のエリートとしての活躍が期待されているわけです。博士後期課程はさらにその4分の1となり狭き門となります。
 博士前期課程の修了者は、研究を主体的に行う方法を身につけたと思います。博士後期課程の修了者は、今後学者として大成できる可能性があるというレベルに到達しました。皆さんは「学問」の入り口に入られました。学問は人類がもつ最も崇高な能力です。スポーツの分野でオリンピックに出場できることは大変名誉なことです。無論それには、高度で粘り強い鍛錬が必要です。学問の世界も同様で、高度で粘り強い鍛錬の後に、すばらしい成果が現れてきます。フランスの生化学者パスツールは「チャンスは準備したものに微笑む」といっています。皆さんの中から、本学の名誉となる傑出した人物が出てくれることを期待しています。今年から「稲葉カヨ記念教育研究奨励賞」を授与できることになりました。稲葉先生を目指してください。
 修士は2年、博士は3年ですが、せっかく奈良という場所とご縁ができたのですから、是非学生時代の思い出を、奈良とリンクして記憶してください。正倉院展はご覧になりましたか。戦後打ちひしがれていた人々の心に希望と勇気を与えた奈良時代の宝物ですね。この宝物には人を思いやるという日本人の心の原点を見ることが出来ます。3・11の東日本大震災は丁度4年前でした。人間の力はか弱いものだと知りましたが、一方復興の活動を通じて人間の人を思う力は強力であることも知りました。
 学問の進歩は本来個人的な営みですが、近年は多くの人が協力して推進するタイプも増えてきました。価値のある論文を通じて社会の発展に貢献すること、それが皆さんの使命です。そして学問のすばらしさを後輩に伝えていくことも重要です。

 最後になりますが、奈良女子大学大学院人間文化研究科において切磋琢磨された皆さんが、知能・品格ともすばらしい指導者に成長されることを祈念してお祝いの言葉といたします。

平成27年3月24日 奈良女子大学長 今岡春樹



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