2021年度
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中間発表
講演:中塩屋 璃奈(奈良女子大学大学院人間文化総合科学研究科数物科学専攻)
題名: 高温のパラフィンから形成される固化膜の形のダイナミクス
場所: C141
日時: 11月26日(金) 13時45分-15時00分
概要
液体同士の衝突にはクラウンの形成や気泡の巻き込みなど興味深い現象が多く見られる。しかし、その現象はほんの一瞬でありまた衝突の形跡を残さないため解析することは難しく、これまでX線や超高速カメラなどを用いながら解析が進められてきた。今回我々は、凝固点の低いパラフィン(凝固点=56-58°C)を用いることで液体同士の衝突に形跡が残るような衝突実験を行いその形跡から解析を行いたいと考えている。なお、コントロールパラメーターは水面の温度T(°C)と液滴の衝突速度v(mm/s)となる実験装置を作成した。本発表では、パラフィンと水を用いた先行研究や液滴と液面の衝突実験の先行研究を紹介し、予備実験から今後の実験の方針を報告する。
中間発表
講演:田口 真実(奈良女子大学大学院人間文化総合科学研究科数物科学専攻)
題名: phase field法を用いた数理モデルの研究
場所: C141
日時: 11月26日(金) 13時00分-13時45分
概要
Here-Shawセルを用いたビスカスフィンガリング現象は有名な実験である。ビスカスフィンガリング現象にはペーストなどの粘弾性体が使われてることが多いが、ある実験では媒体として粉体を用いている。この粉体に空気を注入した際に見られるフィンガリング現象は、フラクタル次元解析を用いると他の多孔質媒体と同じ性質を持っていることがわかっている。これらに興味をもち、粉体中で起こるこの現象を再現するモデルを作りたいと考えた。現在は、phase field modelという結晶成長や亀裂を見ることができるモデルに可能性を見出し、まずModeⅢのモデルの勉強を行っている。本発表では、興味を持った実験と破壊のフェーズフィールドモデルについて説明し、現在行っているModeⅢの破壊のモデルのシミュレーション結果を示す。
非平衡ダイナミクスセミナー
講演: 田中 良巳(横浜国立大学)
題名: 浸透現象の非平衡物理学
場所: 奈良女子大学理学部G棟 G201 教室
日時: 8月28日(土) 15時30分~17時00分
概要
いわゆる浸透「圧」は,分かったようで分からない効果の典型例ではないだろうか?
Einsteinが, ブラウン運動の理論[1]を構築するための補助線的概念として浸透圧をつかっているが,
その議論はトリッキーで, 常人の理解を超えた面がある.また, 高分子科学を体系化した
Floryはその著書[2]の中で, 半透膜と高分子網目系における浸透圧の比較を,
(示唆に富む良質な)曖昧さに富む言葉で論じている.
そして1970年以降, ゲルに携わった物理学者によって浸透圧の理解は進んでいる[3,4].
こうした先駆的研究からの教訓は,「浸透圧と静水圧との関係をいかに混乱なくとらえるか」が大切だということである.
現在でも, ソフトマター物理あるいは生物物理やマイクロ流体力学といったその隣接分野では,
浸透圧・浸透効果が引き起こす動的現象は,重要なトピックスである[5].
本セミナーでは, ゲルの溶媒置換の実験[6]で見いだされた, 「浸透圧のようで浸透圧ではない現象」
の解析を通じて見えてきた多成分系の動的非対称性に由来する浸透効果について議論する.
議論の道具は, Osnagerの変分原理に基づく力学的平衡(熱力学的駆動力込み)の表現である.
この観点から, 熱力学的(van’t Hoff的)浸透圧もふくめ浸透現象一般を俯瞰する視点を提供することを目指したい.
[1] A. Einstein, Investigations on the Theory of the Brownian Movement, Dover Publications (1956).
[2] P. J. Flory, Principles of Polymer Chemistry, Cornell Univ Press (1953).
[3] T. Tanaka, Phys. Rev. Lett. 40, 820 (1978).
[4] K. Sekimoto, J. Phys. II 2, 1755 (1992).
[5] S. Marbach and L. Bocquet, Osmosis, from molecular insights to large-scale applications, Chem. Soc. Rev., 48, 3102 (2019).
[6] Y. Tanaka, M. Seii, J. Sui and M. Doi, J. Chem. Phys. 152, 184901 (2020).
集中講義
講演: 田中 良巳(横浜国立大学)
題名: 浸透現象の非平衡物理学
場所: 奈良女子大学新B棟 B1206教室
日時: 8月26日(木)10:40-12:10,13:30-16:45
8月27日(金)10:40-12:10,13:30-16:45
8月28日(土)10:40-12:10,13:00-14:30
概要
拡散方程式は,(それ自体は時間変化については何も言わない)熱力学の法則と整合的な最もシンプルな時間発展法則である.
実際,散逸系のメカニクスやダイナミクスを拡散方程式抜きで語ることはできない.この講義では,ソフトマテリアルの力学-破壊のような非線形性の
強い場合やアクティブな効果がかかわる場合も含め-を拡散方程式をキーワードに俯瞰したい.
1.拡散方程式の種々の導出
2.拡散方程式の定性的扱い
3.理想鎖とゴム弾性
4.高分子の粘弾性と管モデル
5.散逸系の変分原理入門
6.浸透圧と拡散方程式
7.ソフトマターの力学と拡散方程式
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奈良女子大学,
理学部数物科学科, 非平衡ダイナミクス研究室
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