2014年度研究室メンバーのご紹介

集団生物学研究室には和田研究室と遊佐研究室があります。 和田研究室、遊佐研究室それぞれに所属しているメンバーの紹介です。

教員

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教授 和田恵次 メールアドレス:mbanzai@cc.nara-wu.ac.jp

研究領域:海洋生物学、動物生態学、進化系統学、保全生物学
海産底生動物の生態、行動、系統進化、保全に関する研究をしています。 主に干潟に生息するカニ類や貝類を材料に、生活史、個体群動態、社会行動、種間関係、系統進化、保全生物学を扱っています。

現在は… 1)潮間帯カニ類における社会行動の多様性とその進化過程
2)カニ類におけるはさみ振り行動や個体間掃除行動の社会的機能
3)汽水性カニ類の個体群間での遺伝的分化
4)汽水域に固有の希少性貝類の生活史と分布
などのテーマを扱っています。

教授 遊佐陽一

メールアドレス:yusa@cc.nara-wu.ac.jp



研究領域:生態学,行動学,進化学,遺伝学,応用動物学
貝類や甲殻類を中心とする淡水・海洋生物の生態と行動の研究を行っています。

現在は… 1)フジツボ類の性表現と矮雄現象
2)ウミウシ類における盗葉緑体現象
3)種間関係(間接効果や対捕食者戦略)
4)生物的抵抗を用いた外来種管理
5)スクミリンゴガイの性比変動と性決定機構
6)深海などの特異な環境に生息する動物の生態
などのテーマを扱っています。

学生

上から、所属・回生・名前、研究テーマ、研究テーマの紹介

遊佐研 D2 和田葉子 (日本学術振興会特別研究員DC2) 長期的な間接効果の働き方 生態系において、ある生物種は他種と直接的な種間関係をもっていますが、これに加え、一見何のかかわりもない種と間接的かつ相互に影響を与えあっています(間接効果)。私は現在、岩礁潮間帯において、捕食者である肉食性巻貝が草食性カサガイを介して藻類の群集構造に及ぼす間接効果の大きさを、長期間にわたって評価しています。

和田研 D1 宮嶋彩 モクズガニ科イソガニ属カニ類にみられる鉗脚上軟毛の房の
特徴と社会的機能
モクズガニ科のカニ類には、ハサミに軟毛の房をもつ種が多く知られています。軟毛の房の有無には雌雄差がみられ、雄だけにある種と雌雄両方にある種がいます。私は、軟毛の房が社会的な機能をもつか、また、種によって雌雄差が異なるのはなぜかを社会行動の観察や生活史特性の調査から明らかにすることを目的に研究を行っています。

遊佐研 M2 辰巳由 ヒメタニシにおける性比調節とDNAマーカーの開発 ヒメタニシにおいて、親による子の性比調節の可能性が示唆されましたが、死亡率が高い、雄親との関係が調べられないなどの問題がありました。そのため、現在DNAマーカーによる親子判定の方法の確立のため、マイクロサテライトマーカーの開発を行っています。

和田研 M2 秋田桜子 奈良公園におけるニホンジカのおじぎ行動―その社会的行動としての評価 奈良公園にはヒトがニホンジカに鹿せんべいを与える独自の習慣があり、奈良公園のニホンジカは供餌者に対しておじぎ行動を行います。本研究では奈良公園と宮島の個体群に対して鹿せんべいを用いた供餌実験を行い、おじぎの向きや回数といった特徴を地域や個体の特徴と関連付けて明らかにすると共に、行動の伝播が個体間で起こりうるかを調査します。

和田研 M2 田中薫子 淡水性エビ類と寄生性ヒルミミズ類との関係 紀伊半島にはヌマエビ類に寄生するヒルミミズが生息しています。本研究では、紀伊半島の複数河川におけるヒルミミズの分布や季節ごとの分布の変化、ホストとなるエビ種間のヒルミミズの共生率の違いを明らかにします。また、ヒルミミズの寄生がホストのエビの成長や繁殖に与える影響を検討します。

和田研 M2 中山真理子 チゴイワガニの生活史と体サイズの性的二型の意義 チゴイワガニはオサガニ科に属する日本固有種です。和歌山県の泥干潟で、年間を通した採集により、繁殖、成長、寿命、性比、体サイズの性的二型などを明らかにしました。本種では雌が雄よりも体サイズが大きいという性的二型が確認され、その意義を考察するため、配偶行動や闘争行動における小さい雄の有利性を検討しています。

遊佐研 M2 宮本彩加 嚢舌亜目ウミウシにおける盗葉緑体能の進化的要因 一部の嚢舌亜目ウミウシは餌である海藻から葉緑体のみを体内に保持して光合成させる能力(盗葉緑体現象)を持っています。盗んだ葉緑体を機能的に維持できる期間は数日から数か月と種によって様々です。一部の嚢舌亜目ウミウシが盗葉緑体能を獲得し、さらに長期間の維持が可能になった生態的要因を調べています。

遊佐研 M2 安岡法子 カキ類の性表現の多様性:メカニズムと適応的意義 多様な性表現(性転換,同時的雌雄同体,雌雄異体)をもつとされるカキ類を対象に,性表現に影響する環境要因を調査しています。対象種は,マガキCrassostrea gigas,ケガキSaccostrea kegaki,オハグロガキSaccostrea mordaxの3種です。また,Saccostrea 属のカキ類に特異的に寄生するクロピンノPinnotheres boninensis(カクレガニ科の一種)が宿主に与える影響についても調査しています。

遊佐研 M2 安田なつみ 深海性固着動物の生活史 固着性の生き物は、一度定着した場所から自分で移動することができません。しかし、深海は餌となる資源が少なく、その供給も不安定です。変動する資源量に対して、そういった生き物がどのような成長・繁殖戦略を取っているのかを研究しています。実験材料として、2006年に発見されたOsedax japonicusの飼育を行っています。

遊佐研 M1 Hendry Wijayanti PLASTICITY OF SEXUAL SYSTEMS IN BARNACLES OF THE GENUS OCTOLASMIS Darwin found that males and hermaphrodites coexist in several barnacle species. My master research focus on the plasticity of sexual expressions whether becoming males or hermaphrodites in the pedunculate barnacle Octolasmis warwickii.

和田研 M1 井田晴香 コメツキガニの闘争行動と性的二型の関係 カニでは雌をめぐる雄間の闘争は主に鉗脚を使って行われるため、 雄の鉗脚が雌のものより大きくなることが多いが、 コメツキガニでは闘争行動で歩脚が鉗脚よりもよく使われるため、歩脚に鉗脚以上の性差が見られます。コメツキガニの闘争行動の特徴を記載し、鉗脚と歩脚の長さの雌雄差との関連を同科他種の特徴との対比も交え考察します。

遊佐研 M1 熊谷菜摘 スクミリンゴガイにおける性比変動 スクミリンゴガイには、1つの卵塊から生まれた子のほとんどがメスである卵塊から、ほとんどがオスである卵塊まで連続的に存在し、性比が卵塊ごとにばらついているのに対して、集団で性比の平均を取ると、オス:メスの比が1:1に近くなるという特徴(性比変動)があります。性比変動にはどのような適応的意義があるのか、どのような仕組みによって起こるのかを調べています。

遊佐研 M1 中村麻紀 ミョウガガイ類における矮雄の授精成功 雌や雌雄同体よりも著しく小さい雄は矮雄と呼ばれています。フジツボ類であるミョウガガイ(雌+矮雄)とヨーロッパミョウガガイ(雌雄同体+矮雄)で、矮雄の授精成功に関与する要因を調べるために、マイクロサテライトマーカーの開発と、それを用いた親子判定を行い、各矮雄の授精成功度を調べています。

和田研 B4 重富千尋 絶滅危惧種クロヘナタリ(軟体動物腹足綱キバウミニナ科)の生活史と分布 クロヘナタリは、日本では周防灘、有明海、八代海沿岸の干潟高潮域に分布するが、その生態的特性は知られていません。本研究では、クロヘナタリの分布の季節変化、繁殖期、繁殖行動の特徴、新規加入個体の生息場所特性を明らかにします。

和田研 B4 本彩 ハクセンシオマネキの被食頻度と被食警戒特性 徳島県の吉野川には植生域と非植生域の両方にハクセンシオマネキが分布しています。私は、植生域と非植生域でハクセンシオマネキに対する捕食圧に違いがあるか、また、捕食圧に応じて、ハクセンシオマネキの警戒度に違いがあるかを明らかにしようとしています。

和田研 B4 山田実央 奈良公園のニホンジカを利用する鳥類 奈良公園のニホンジカはヒトから給餌されることが多く、その餌を鳥類が横取りする場面がよく観察されています。さらに、ニホンジカの体表寄生虫を餌とする鳥、体毛を巣材料に獲る鳥などがいるとみられています。このような奈良公園のニホンジカを利用する鳥類の存在を明らかにし、ニホンジカが鳥類へ与える影響を示していきます。

和田研 B4 山本靖子 ハクセンシオマネキとコメツキガニ類との種間関係 私はハクセンシオマネキとコメツキガニ類との空間をめぐっての種間関係をテーマとしています。ハクセンシオマネキ単独生息地とコメツキガニ類との混生地を比較し、ハクセンシオマネキの分布域とハクセンシオマネキのコメツキガニ類への反発性に相異があるかを検証しています。

遊佐研 B4 稲田美和 アブラムシの繁殖における対捕食者戦略 捕食者の存在下で繁殖を抑制することは、対捕食者戦略として有効だと思われますが、ほとんど例が知られていません。そこで、化学シグナルを使用した対捕食者戦略が知られているアブラムシにおいて、繁殖抑制が行われているのかを解明することを目的としています。

遊佐研 B4 野村有未佳  ワレカラの繁殖における対捕食者戦略 ワレカラ(海藻などによく付着している甲殻類の仲間)の中には、雌が子守行動をするものがいます。そこで、ワレカラにおいて繁殖抑制が行われるか、捕食者の存在により子守行動に変化があるかを調べることを目的としています。

遊佐研 B4 廣兼優 嚢舌類ウミウシの系統関係 軟体動物門腹足綱に属する嚢舌類ウミウシは餌とする藻類から葉緑体を自分の細胞に取り込み(盗葉緑体現象)、光合成を行うということが知られています。本研究では嚢舌類の系統を複数の遺伝子を用いて明らかにします。