教室メンバー

名誉教授 共生科学研究センター 協力研究員
三木健寿
自律神経生理学、環境生理学、循環生理学

教授
吉本光佐
自律神経生理学、栄養生理学、循環生理学

大学院人間文化総合科学研究科(大学院生)
生活環境学部 心身健康学科 生活健康学コース(3回生・4回生)
研究内容
睡眠・運動時や高血圧発症時の自律神経の変化とその役割に関する研究
自由行動下のラットを用い、睡眠・覚醒・運動時の交感神経活動による循環機能調節について研究をしています。特に、自由行動ラットの交感神経活動を長期計測する独自の方法を確立しました。この方法を用い、睡眠レム期には、筋肉活動が増加しないにもかかわらず覚醒・行動時と同じような交感神経活動と循環動態の変化が生じ、上位中枢活動の活性化のみで交感神経活動を変化させていることを報告してきました。また、正常状態から高血圧発症へ移行するときに交感神経活動がどのように高血圧発症に関与するのかを検討しました。
迷走神経活動と交感神経活動の長期同時記録による臓器間ネットワークの仕組の解明と疾患予測
(ムーンショット目標2:恒常性の理解と制御による糖尿病および併発疾患の克服)
自律神経による臓器機能調節の実態解明を目的とし、意識下ラットを用いた迷走神経活動と交感神経活動の長期・同時記録を基盤に進めています。麻酔の影響を受けない自由行動下で、神経活動、心拍数、血圧、血糖値などを連続記録することで、臓器間の神経制御を時間軸に沿って直接捉えることを可能としています。
迷走神経活動を遠心性(脳から臓器)と求心性(臓器から脳)に弁別する新規手法を確立し、マイクロカテーテルによる局所麻酔薬投与により、求心性迷走神経活動を選択的に遮断できることを実証しました。
さらに、STZ誘発T型糖尿病モデルにおいて、迷走神経、腎・腰部交感神経活動、心拍数、血糖値を8日間連続測定し、高血糖発症過程における臓器別自律神経応答の違いを明らかにしました。迷走神経は主に受容的役割を示す一方、腰部交感神経活動は筋代謝を反映して持続的に亢進した。
本研究で得られた大規模時系列データは、数理モデル解析と連携することで、動的恒常性の理解を深め、疾患の早期兆候を捉える予測モデル構築への展開が期待されます。
本研究はムーンショット目標2 2050年までに、超早期に疾患の予測・予防をすることができる社会を実現:恒常性の理解と制御による糖尿病および併発疾患の克服の研究分担として行われています。
交感神経活動と迷走神経活動計測方法
私たちの教室では、ラットを用いて腎交感神経活動、腰部交感神経活動、頸部迷走神経活動を、長期間かつ連続的に計測する手法を確立しています。
各神経活動の計測方法や解析については、これまでに論文として報告していますので、詳細はそちらをご参照ください。
腎交感神経活
Miki K, Kosho A, Hayashida Y. Method for continuous measurements of renal sympathetic nerve activity and cardiovascular function during exercise in rats. Exp Physiol. 2002;87:33-39. doi: 10.1113/eph8702281
腰部交感神経活動
Miki K, Oda M, Kamijyo N, Kawahara K, Yoshimoto M. Lumbar sympathetic nerve activity and hindquarter blood flow during REM sleep in rats. J Physiol. 2004;557:261-271. doi: 10.1113/jphysiol.2003.055525
頸部迷走神経活動
Miki K, Miyaura W, Ikegame S, Yoshimoto M. Method for measuring cervical vagal nerve activity in conscious rats. American Journal of Physiology-Endocrinology and Metabolism. 2025;328:E230-E241. doi: 10.1152/ajpendo.00184.2024
これらの神経活動を安定して長期間記録するためには、論文には十分に書かれていないものの、実際には極めて重要なポイントがあります。それが、マイクロサージェリーの技術と使用する器具です。まず、神経周囲の微細な構造を安全に操作するためには、作業視野を十分に確保できる適切な実体顕微鏡が不可欠です。また、マイクロ鑷子、マイクロ剪刀、マイクロ鉗子などの専用器具を用いることで、神経への侵襲を最小限に抑えた操作が可能になります。
マイクロサージェリーでは、左右の手を同じように使える基本手技が求められます。神経は非常に細く、ミクロメートル単位での組織剥離が必要となるため、一方の手で組織を安定させながら、もう一方の手で操作を行い、状況に応じて左右の役割を入れ替えるといった動作を自然に行う必要があります。このような手技が十分に身についていない場合、細い神経の上に電極を慢性的かつ安定して留置することは困難です。そのため、電極留置には一定期間の経験とトレーニングが不可欠であり、初心者には適切な指導者のもとで段階的に技術を習得することが強く求められます。
さらに、記録された信号が交感神経活動や迷走神経活動であるかどうかの判定は、波形と音の両方を用いて行いますが、波形だけで判断するのは容易ではありません。私たちの教室では、主に神経活動特有の「音」を聞いて判別する方法を重視しています。それぞれの神経活動には特徴的な音があり、まずはその音を繰り返し聞き、感覚として理解していくことが重要です。そのため、これから本手法を習得する方には、まず音を聞いて理解することから始めることを強くおすすめしています。

自律神経活動の長期計測に必要な設備
本教室では、交感神経活動および迷走神経活動を長期間・連続的に安定して計測するため、専用の研究環境と実験設備を整備しています。
自律神経の電気信号は、交感神経で約50 μV、迷走神経では10 μV前後と非常に微弱です。そのため、電磁波や電波ノイズを遮断するシールド環境(ファラデーケージをイメージした構造)を備えた実験空間を使用しています。
また、自律神経活動は温度、音、光といった環境変化に敏感に反応します。そこで、恒温制御、防音構造、照度一定といった条件を満たす動物実験専用の恒温チャンバーを設置しています。さらに、独立したアースラインを確保することで、ノイズ混入を抑え、長期計測の安定性を高めています。
長期計測では電極の分極などにより、市販の一般的なアンプでは測定が困難になる場合があります。そこで本教室では、長期・微小電位計測に特化した独自設計の生体信号増幅アンプを開発・使用し、安定した自律神経活動の記録を実現しています。
さらに、慢性電極留置のために、神経を鮮明に観察できる実体顕微鏡や、体温を維持しつつ電気ノイズを発生させない専用の手術環境を整えています。
これらの設備と技術は、従来の電気生理学研究で培われてきた基本に基づくものです。自律神経活動の計測には完成された計測キットは存在せず、環境整備とノイズ対策を丁寧に積み重ねることが不可欠です。測定された信号が目的とする神経活動であるかどうかは、信号を音として確認することで判断できます。
論文報告
- Yoshimoto M, Yagi K, Ikegame S, Miki K. Progressive Increase in Renal Sympathetic Nerve Activity Induced by Cold Exposure. Hypertension. 2025;82:615-623.
doi: 10.1161/HYPERTENSIONAHA.124.23499 - Miki K, Miyaura W, Ikegame S, Yoshimoto M. Method for measuring cervical vagal nerve activity in conscious rats. Am J Physiol Endocrinol Metab. 2025;328:E230-E241.
doi: 10.1152/ajpendo.00184.2024 - 池亀静香、三木健寿、吉本光佐. 恐怖記憶想起時の心拍数と交感神経活動の文脈依存的反応: 海馬 CA1 領域と視床下部室傍核の関与. 自律神経. 2025;62:123-127.
- 三木健寿、吉本光佐. 日常生活における交感神経活動による 動的な動脈圧調節 ―睡眠,運動から精神的ストレスまで. 医学のあゆみ. 2025;295:286-292.
- 吉本光佐、三木健寿. 運動による交感神経活動と動脈圧調節の変化. 自律神経. 2022;59:293-299.
- Miki K, Ikegame S, Yoshimoto M. Regional Differences in Sympathetic Nerve Activity Are Generated by Multiple Arterial Baroreflex Loops Arranged in Parallel. Frontiers in Physiology. 2022;13:1-8. doi: 10.3389/fphys.2022.858654
- Ikegame S, Yoshimoto M, Miki K. Simultaneous measurement of central amygdala neuronal activity and sympathetic nerve activity during daily activities in rats. Exp Physiol. 2022;107:1071-1080. doi: 10.1113/EP090538
- Kondo N, Yoshimoto M, Ikegame S, Miki K. Differential shifts in baroreflex control of renal and lumbar sympathetic nerve activity induced by freezing behaviour in rats.
Exp Physiol. 2021;106:2060-2069. doi: 10.1113/EP089742 - Yoshimoto M, Onishi Y, Mineyama N, Ikegame S, Shirai M, Osborn JW, Miki K. Renal and Lumbar Sympathetic Nerve Activity During Development of Hypertension in Dahl Salt-Sensitive Rats. Hypertension. 2019;74:888-895. doi: 10.1161/HYPERTENSIONAHA.119.12866
- Miki K, Yoshimoto M. Exercise-Induced Modulation of Baroreflex Control of Sympathetic Nerve Activity. Front Neurosci. 2018;12:493. doi: 10.3389/fnins.2018.00493
- Miki K, Yoshimoto M. Sympathetic nerve activity during sleep, exercise, and mental stress. Auton Neurosci. 2013;174:15-20. doi: 10.1016/j.autneu.2012.12.007
- Yoshimoto M, Yoshida I, Miki K. Functional role of diverse changes in sympathetic nerve activity in regulating arterial pressure during REM sleep. Sleep. 2011;34:1093-1101. doi: 10.5665/SLEEP.1168
これ以前の論文と研究費情報は 次のリンクをご参照ください。
三木健寿 ► reseachmap 論文
吉本光佐 ► reseachmap 論文