近日公開予定
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タミルナドゥ稲研究所(Tamil Nadu Rice Research Institute、TRRI)は、南インドのタミルナドゥ州Aduthurai(10.998 °N, 79.479 °E)にあるタミルナドゥ農業大学(Tamil Nadu Agricultural University)の付置研究所の一つである。作物学、農学、育種学、遺伝学、農業昆虫学、植物病理学などを専門とする研究者が中心となり、地域の水稲栽培に関する研究の中核施設となっている。
TRRIが担う業務は、地域に適した品種改良や栽培体系の確立、持続可能な農業システムの改良、農業経営や栽培技術の普及活動を通じた地域の農業問題への対応など、多岐にわたっている。
TRRIは各種の研究施設、水田圃場などの約64 haの敷地を有しており、年間を通して水稲に関する様々な研究を実施している。また、TRRIはハイデラバード州のIndian Institute of Rice Research、オディシャ州のCentral Rice Research Instituteのみならず、フィリピンの国際稲研究所(IRRI )などの国際研究機関とも連携している。
バングラデシュ人民共和国は、南アジアのインドの東に位置する国である(国名は、バングラディシュ、バングラデッシュなどと書かれることがあるが、一般的にはバングラデシュが正しいとされる)。国土面積は約15万 ㎦と北海道の2倍程度であるが、人口は約1億5千万人と多く、世界で最も人口密度が高い国である。2016年7月に発生したダッカ・レストラン襲撃人質テロ事件では邦人7名が殺害され、日本でも大きく報道された。2017年3月時点では、外務省の「危険情報」区分では「レベル2:不要不急の渡航は止めて下さい」(4段階の危険度のうち、安全側から2番目)に区分されている。
バングラデシュの主食は米である(日本の主食も米と言えるが、食の多様化にともない米以外の食材も多く食べられている。しかし、バングラデシュでは、真に「米が主食」と断言できるほどに米が食べられている)。そのため、狭い国土面積にも関わらず米の生産量は多く、世界の米生産量ランキングでは中国・インドに次ぐ3〜4位に位置する。このように米生産量は多いのであるが、「米好き」の国民性のために米の消費量が生産量を上回り(日本の米消費量の約4倍!)、米の輸入国となっているのが現状である。
バングラデシュ農業大学校(Bangladesh Agricultural University、以下BAUと略称)は首都ダッカから北約100 kmのマイメンシン市に位置する。BAUは1961年に設立された同国唯一の農業大学校で、農学部などの6つの学部から構成されている。キャンパス内には外国人訪問者用の宿泊施設(International Guest House)があり、快適に過ごすことができる(夕食後の散歩時にホタルの乱舞が見られるなど素敵なキャンパスです)。
BAUにおけるメタン交換量(フラックス)観測の現地研究者は、同大学のMd. A. Baten教授である。Baten教授は、1998年に千葉大学園芸学部で博士号を取得後、つくば市の農業環境技術研究所で微気象・フラックスを研究された先生で、現在は同大学農学部の環境学科の教授を務めている。
Baten教授の研究室は、バングラデシュにおける農業気象学研究の先導的な役割を担っており、2005年頃までは同国の農地の微気象特性や気象と作物成長の関係を調べる基礎的な研究を実施してきた(例えば、耕地における微気象要素の特徴の把握や、畝の方向が畑地の熱収支に及ぼす影響の研究などである)。
2006年に農業環境技術研究所の宮田明博士が日本側代表者となる二国間交流事業により「ベンガル低地の水田におけるフラックス総合観測」が実施された。この事業により、同大学の研究圃場における熱・水・二酸化炭素フラックスの研究が開始された.同国の米の作付体系は、米の二期作、すなわち、1年に2回、米を栽培することが多い。具体的には、乾季作であるボロ稲(1月頃移植、5月頃収穫)と雨季作(主作)であるアマン稲(8月頃移植、12月頃収穫)であり、研究圃場も同様の作付を行っている。なお、コンバインなどの農業機械の普及は進んでおらず、田植えや収穫などの農作業は手作業である。
水田は、作期中に湛水されるため、土壌が還元状態になり、本研究プロジェクトの主題であるメタンが多く生成される。このメタン放出量を測定するために、最新のメタン分析計を2013年夏に同観測点に設置し、連続測定を開始した。得られたメタン放出量は、日本の水田における数値よりも大きく、バングラデシュの水田が大気メタン濃度に与える影響が大きいことが示唆される結果が得られている。
本研究プロジェクトのフラックス観測研究では、インド南部の水田観測点とともにBAU観測点のデータを統合して扱い、南アジアにおけるメタン収支を「地上」から評価することを目的としている。研究プロジェクトメンバーが年に数回の現地訪問を行い、機器のメンテナンスやメタン生成の制御要因として重要な土壌の理化学的特性を調べる作業・研究を実施中である。
AsiaFluxは、森林、草原、農地などの陸域生態系における二酸化炭素や熱・水エネルギーの交換量を測定し、それらの広域の収支や環境応答を把握することを目的とした研究者・観測点のアジア域のネットワークである
(詳細は、AsiaFluxのWebサイト [http://www.asiaflux.net/] や概略を紹介したWebページ [http://www.naro.affrc.go.jp/archive/niaes/magazine/150/mgzn15005.html] を参照して下さい)。BAUの観測点は、AsiaFluxの数少ない農耕地観測点の一つであり、重要な場所とされている。
2014年2月には、BAUでメタンと炭素循環に関するセミナー(Seminar on Methan Flux and Carbon Cycle)と若手研究者向けの技術講習(AsiaFlux Training Course)が開催された。同セミナー・講習会には、日本の他、アジアを含めて11カ国からの参加があり、活発な議論や交流が行われた(セミナー・講習会のレポートは、AsiaFlux Newsletterの37号 [http://asiaflux.net/?action=multidatabase_action_main_filedownload&download_flag=1&upload_id=514&metadata_id=41]に掲載されている)。
前述したようにバングラデシュの「危険情報」区分はレベル2で、現在(2017年)、気軽に観光旅行をすることが難しい地域となってしまいました。本コラム執筆者は、2006年以降、総計で10回以上、バングラデシュを訪れていますが、現地で接する人は(時におせっかいと感じるほど)親切であり、一緒に過ごすことが楽しいと感じています。また、2010年までは「地球の歩き方」が刊行されていない国としても有名(?)で、観光地化されていない自然・人々が多いことも魅力の一つです。何年後になるか分かりませんが、現在の危険な状態が解消されましたら、ぜひ旅行に訪れて欲しい場所です。