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令和5年度奈良女子大学卒業式 学長式辞

今岡学長式辞


 文学部163名、理学部163名、生活環境学部191名、合計517名の学部卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。今年は5年ぶりに全学部合同で卒業式を行うことが復活しました。そして元学長、佐保会理事長、佐保短期大学学長、放送大学奈良学習センター所長、育友会会長のご来賓の方々と共に皆様のご卒業を祝うことが出来ました。
 私たち奈良女子大学の教職員一同は、本日のご卒業をお喜びの保護者の方々に、心よりお祝いを申し上げます。
 ご卒業は、皆様の人生において幾つかある節目の一つです。節目に当たって一つお願いがあります。
 まず、皆さんの大学時代は新型コロナの影響を最も受けましたね。令和2年度の入学式は行いませんでした。サークル活動も十分には行えませんでした。でも今日の晴れの日を迎えることが出来ました。ご家族あるいは皆さんを支えてくださった方に「ありがとうございました、おかげで無事卒業することができました。」と感謝の言葉を伝えてください。この言葉は、経済的支援だけでなく、皆さんが無事でいて欲しいとの祈りの気持ちに対しての返礼になります。是非口に出して伝えてください。13年前の東日本大震災や今年の能登半島地震を思い起こせば、無事であること、「つつがなし」は実は大変な事なのです。
 繰り返しになりますが、皆さんの学年は、新型コロナウイルスへの影響で不自由で不安な4年間を過ごされました。そのような現実は現実ですが、少し俯瞰して考えたことをお伝えしてお祝いの言葉にしたいと思います。地球史と人類の話です。
 地球は46億年前に誕生し、生命は40億年前に誕生しました。20万年前にホモ・サピエンスが登場し4万年前に日本列島に到達しました。私たち人類は他の生物ととても違います。しかし細胞や代謝や遺伝子の仕組みは同じなので、進化の過程で登場した生物と考えるのが自然です。人の特徴は「知識」にあります。個人や集団が得た知識を次の世代に伝え、それらを蓄積し、種全体で共有します。そしてこの「知識」を「信頼」します。信頼の証は農耕社会に現れます。手元にある貴重な食料を種としてまいて、収穫まで待つことが出来たのは知識への信頼です。皆さんもこの信頼できる知識を得るために、20年以上学び続けているのです。
 さて、人類の発展が地球規模に巨大化したのは、産業革命以降です。最初はエネルギー革命がおこり続いて情報革命がおこりました。家庭内には数多くのIoTデバイスが活躍しています。一方で量子コンピュータや生成AIは予算も影響も大規模です。現在の情報革命は多くの問題を抱えています。知識への信頼は経験によって強化されます。この強化を人工的に行い、100年、1000年かかることを、1年や半年で行うことが出来るほど、コンピュータのパワーが上がってきました。人類の経験ではなくコンピュータに行わせた疑似的な経験が、私たちの新たな道具として登場しています。二つの事にご注意ください。一つ目は知識そのものが素早く更新されることです。フォローするためには学び続けるしか方法はありません。二つ目は、信頼できる知識とそうでない知識の見極めです。
 話は変わりますが、せっかく奈良とご縁があったのですから、是非学生時代の良き思い出を、生涯の宝物としてお持ちください。奈良の特徴は長い伝統です。修二会は1273回、一度も中断することなく継続しています。最大の危機は430回目で平氏の南都焼き討ちの後です。ですから、新型コロナの影響下でも継続はびくともしませんでした。奈良での経験から、皆さんは10年、100年、1000年というマルチスパンで物事を考える力を得たと思います。コロナ禍やウクライナ侵攻など厳しい話題を考えるとき、この話は100年ものかな?10年ものかな?と考えると、少し俯瞰的に考えることが出来ます。
 最後になりますが、皆さんの輝かしい未来を祈念してお祝いの言葉といたします。


令和6年3月22日 
奈良女子大学長 今岡春樹