グリーン・ネットワーク・オブ・エクセレンス-環境情報分野

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 衛星データ等複合利用による
   東アジアの二酸化炭素, メタン高濃度発生源の特性解析


  研究計画概要

研究内容

  MODIS センサーなどからの地表面・植生データ(ボトムアップ解析用データ)と、GOSAT などの温室効果気体濃度データ(トップダウン解析用データ)、および気球ゾンデや地上計測器などのデータの複合利用により、東アジアにおける二酸化炭素発生量について、整合の取れた新たなデータベースを作成する。東アジアでは焼畑、泥炭火災A森林火災などのoイオマスバーニング起源の二酸化炭素の寄与が大きいにもかかわらず、その不確定性が大きいので、これに関するデータベースを作成する。特に、鉛直積算量と上空濃度の同時解析により下層濃度の導出を試みると同時に、CO2 ゾンデにより把握された鉛直濃度分布との複合解析により、物質輸送の3次元的な構造に関するプロセススタディーを行う。また、地上設置したリモートセンシング機器による連続観測を実施し、これにより相互補完された衛星データセットをデータ統合・解析しシステム (DIAS) へ再投入する。

  利用波長や解析手法の異なる衛星搭載センサー (SCIAMACHY と GOSAT-TANSO 等)の複合利用により、東アジアの水田等の高濃度発生源におけるメタン濃度について、その特性把握のための解析を実施し、相互比較・校正された新たなデータセットを作成する。必要委応じて、データ解析手法の改良を実施する。

  中国の四川盆地など、大きな発生源を持つ高濃度地域においてはサンプリングによる直接観測を実施し、開発された衛星データ解析手法の検証を行う。同時に、複数波長の同時解析により下層濃度を推定する手法を開発し、より発生源の情報を多く含む高濃度域における領域下層データセットの作成という新たな試みを実施する。

  人材育成・若手教育に関しては、衛星データ解析手法や近年の研究動向などについて年1回程度のセミナーを開催。特に、さまざまな衛星などのデータセットを活用できるように、ソフトウェアツールの開発とともにわかりやすい利用講習会を開催して、二酸化炭素などの温室効果気体に関する研究の裾野を広げ、日本における温暖化研究をより活発化させることを目指す。











                        研究概念図

達成目標

・ バイオマスバーニング起源の二酸化炭素について、衛星データの複合的解析により
     1) 推定されたバイオマス量に基づく放出量
     2) 火災放射パワーから推定される放出量
     3 )温室効果気体センサーによる大気中濃度
の3つが整合したデータセットを作成し、東アジアにおけるバイオマスバーニング起源の二酸化炭素放出の特性を明らかにする。

・ CO2 ゾンデによる鉛直濃度分観測と地上設置型リモートセンシングによる連続観測データに基づき、物質輸送の鉛直構造解析に関するキーパラメータの抽出を行う。

・ 二酸化炭素の鉛直積算量と上空濃度の同時解析から下層濃度を導出する手法を開発し、バイオマスバーニング発生域での下層濃度データベースを作成する。

・ 利用波長や解析手法の異なる衛星搭載センサーの複合利用により、東アジアにおけるメタン高濃度発生地域での特性を把握する。特に、複数波長の同時解析による下層濃度解析手法の開発を行い、高濃度発生域について領域下層データセットの作成を実施する。

・ メタン高濃度地域において直接サンプリングにより、本事業で開発したメタン下層濃度解析手法などの衛星データ解析手法の検証を実施する。

・ 若手研究者や学生を聴衆として想定し、衛星データ解析手法や近年の研究動向などについて年1回程度のセミナーを開催。また、開発して公開したソフトウェアの利用講習会なども開催する。

期待される効果

・ バイオマスバーニング起源の二酸化炭素放出量について、複合的なアプローチと検証データに裏打ちされた衛星データの解析により、これまで一般に過小評価されていると言われている発生源データベースの改良が行われ、東アジア地域における炭素循環研究に資する、より信頼度の高いデータセットの投入を実現する。

・ 東アジアにおけるメタン発生の主要な要因である水田からの発生特性の把握により、将来のメタン発生量抑制を目指した農業手法の提案のために必要となる基礎データセットを構築する。

・セミナー開催や書籍出版により、同研究分野への新たな参画者の増加や、初学者の基礎力の向上に資する。

・ データベースの活用研究者を拡大し、日本の温暖化研究の裾野を広げられる。

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