銀河団 cluster of galaxies

銀河団とは?

銀河団とは数100個から数1000個の銀河から成る、宇宙で最大規模の天体のことです。我々の目で見ることのできる光の波長の範囲(可視光)では銀河の間には何もない空間が広がっています。しかしX線を用いて銀河団をみると、銀河の間に数千万度にも達する高温のガスが満ちていることがわかりました。

RXJ 1347銀河団

可視光画像(左)、X線画像(右)
(Ota et al. 2008)

また、この高温ガスの質量は可視光で観測できる質量の数倍にも達します。また、この大量の質量を閉じ込めるために、銀河団にはどの波長でも観測できないダークマター(暗黒物質)の存在も示唆されています。
こうしたように、X線を用いて銀河団を調べることにより、銀河団の進化についての研究を行い、ひいてはダークマターや宇宙の構造形成などについての研究を行うことができるとされています。

研究テーマ

銀河団のガス運動の測定

銀河団は衝突合体を繰り返して成長してきたと考えられています。それに伴い、銀河団の高温ガスが渦を巻いたり、銀河団中心に流れ込むなど、 複雑なガス運動が発生すると予想されています。このガス運動を調べることで、宇宙の進化と銀河団質量推定の謎を解明する手がかりを得ることが出来ます。そこでわたしたちの研究室では「すざく」衛星による観測と、次世代観測衛星ASTRO-Hのシュミレーションから、銀河団のガス運動の研究を行っています。

遠方銀河団のフィラメント構造の研究

銀河団は宇宙と同程度の時間スケールをかけて成長してきた宇宙最大規模の天体です。標準的な構造形成のシナリオによると、初期宇宙のわずかな質量ゆらぎが成長し、物質降着や衝突合体を繰り返して大規模構造を形成してきたと考えられています。シナリオによると、大規模構造に連なるフィラメント(蜘蛛の巣のような形)の交差点にあたる最も密度の高い領域が銀河団であるといえます。この銀河団を多波長で観ることで、高温ガス(X線)・銀河(可視光)・ショックの痕跡(電波)と違った視点からの知見が得られ、銀河団構造形成のようすをより多くの面から検証することができます。私たちは、すざく衛星によるX線観測データに加え可視光観測や電波観測によるデータも参考に、遠方(つまりより過去の)銀河団のフィラメントにおける物質分布や物理状態に注目し、研究を行っています。

低表面輝度銀河団のエントロピー測定

銀河の集団である銀河団は、自身の持つダークマターの重力で、周囲のガスを引き寄せることで進化していきます。ですから銀河団は進化につれてエントロピーが上昇し、また明るく輝くようになります。しかし近年、エントロピーが高いにも関わらず暗いという特徴を持った、低表面輝度銀河団が発見されました。暗い銀河団は宇宙にたくさん存在するはずですが、衛星の性能上これまで観測が難しく、低表面輝度銀河団がどう形成されたのかはまだわかっていません。低表面輝度銀河団の進化過程を明らかにすることは、宇宙の階層構造を解明する手がかりにもなるはずです。本研究室では、感度の良い衛星の観測結果を用いて、このような低表面輝度銀河団の研究を行っています。