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強結合プラズマの固化――白色矮星はダイヤモンド?――


[ リリース: 2016.01 ]
奈良女子大学理学部  数物科学科 物理学コース・数物連携コース兼担 清川修二

・ プラズマとは
 氷の温度を上げると水なり、やがて水蒸気になります。つまり固体、液体、気体と状態を変えていきます(下図)。


 更に温度を上げると、水分子が解離し水素原子と酸素原子になり、もっと高温になると水素や酸素が電離します。電離度が小さい場合は電離気体とよばれますが、もっと温度を上げるとほぼ100%電離したプラズマと呼ばれる状態になります。


 このようなプラズマは太陽などの恒星や宇宙空間で見られ、地上ではオーロラ、ネオン管などで見られます。プラズマはプラズマ振動と呼ばれる自発的に発生する振動現象と電離したイオンの電荷が周りの自由に運動している電子によって弱められる(遮蔽効果)現象が現れることが特徴です。

・ 強結合プラズマとは
 上に述べたプラズマは密度が大変小さく稀薄ですが、プラズマの状態のまま、密度を大きくしていくと強結合プラズマとなります。例えば、恒星内部、木星や土星などの巨大惑星の内部、金属伝導電子などがそうです。
 プラズマを理想化したモデルが、One Component Plasma (OCP) と呼ばれるものです。このOCP は結合定数Γの値だけでその性質を知るができる特徴を持っています。結合定数とは


で定義され、Γ> 1 の場合が強結合プラズマです。
 この研究室ではこの強結合プラズマについて研究をしています。

・ 一成分古典プラズマ(OCP)の相転移
 結合定数Γの値が178 くらいになると、プラズマは相転移を起こし結晶化することが計算機によって発見されました。そのときの結晶構造は体心立方格子(BCC) です。下図はBCCの構造図で、黒い円やグレーの円上に原子があり、構造を分かりやすくするため、原子と原子を結ぶ線を書いています。この立方体が上下、前後左右に規則正しく、隙間なく並んだものが結晶です。


◆ 白色矮星の構造
 白色矮星は、太陽ほどの質量を持った星が超新星爆発した後に残る天体で、大きさが地球ほどで非常に高密度な星です。主に炭素と酸素の原子からできていますが、いくつかの種類があります。
白色矮星の結合定数はΓ=100〜200 になりますから、その内部に固体の部分があることが予想されます。例えば主に炭素C と酸素O とからなる白色矮星を強結合プラズマとして、その構造を考えると下図のようになっていると予想されます。


 それぞれの相の半径は不明です。OCP の場合、下図に示すような結晶構造を持つ、もっと安定な面心立方格子(FCC)、六方最密構造(HCP)、単純立方格子(SC) に転移することも予想されていますが、未だ確認されていません。


 白色矮星の中心部の結合定数は非常に大きい(Γ≫178)でしょうから、結晶構造はBCC とは限りませんが、このこともよく分かっていません。炭素の場合、地上におけるダイヤモンドアンビルによる超高圧実験では、β−tin やSC4 と呼ばれる結晶構造、ダイヤモンド構造も現れることが分かっています。



◆ 並列計算機を用いた分子シミュレーション
 現在、白色矮星の環境を計算機で再現して、強結合状態にある炭素プラズマが六方最密構造やダイヤモンド構造を形成するかどうか調べています。分子シミュレーションという計算方法で行う必要があるため、膨大な計算量になるので分散メモリ型並列計算機(左図)を構築して計算しています。

◯本研究に関する最近の論文
著者名:S.Kiyokawa
論文名:"Multi-average ion model for hot dense plasmas derived from finite temperature density-functional theory"
雑誌名・頁等: High Energy Density Physics 13:40-54 (2014).
雑誌のサイト: http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1574181814000603